相棒と長になる男

「俺は万能薬じゃねぇんだぞ、相棒。」

「ごめんね、でも頼りにしてるよ」


やっぱり、俺の相棒は戦いに飢えてるやつじゃない。武族の中でも、右どころか上にも並び立てる者は居ない、と言わしめるほどの強者。

一体どんな男か、誰もが気になるだろう。

あえて俺は言ってやる。

「戦いなんかには興味もない、穏やかに笑う男だ」と。


けど、悪いな。これも半分は外れだ。こいつには消せない業(名前)が与えられている。一族内でのこいつの呼び名には、静かな海の狩人が住んでいると聞く。神官が占い授ける名前には、それ相応の力が宿り、本人は支配され逆らえないのが一族の習わしだ。


相棒は呼び名で呼ばれるのは好きじゃないと言う。「真名があってそれを呼ぶことが許されるならば、私はそう呼ばれたいし呼びたい」というのが本音らしい。


神官上がりの俺は、「相棒」と呼ぶことにした。真名を知った今でも、こいつの名前は軽々しく呼んじゃあいけない気がしてな。


「さて、じいやのところに行こうかな。そろそろ魔術陣が完成してるはずだ」

誰かに会いに行くときの相棒は、一段と良い顔をしてると思う。端正な面持ちが、一瞬だけ子どもに戻る気がしてな。こいつを「武人として」称える奴等に見せてやりたいくらいだ。


「あのじいさん、相変わらず世話好きだな。」

「頼まれたら断れないんだよ。可愛い弟子も居るしね」

「馬のお嬢ちゃんか?俺は苦手だな」

「……君って本当に好き嫌い多いよね」

「お前さんに言われたくないな」

相棒の皮肉も、俺の耳には心地よいメロディさ。

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