第26話 フレンダ大炎上

 スピーディ一行の話に戻そう。マヤ達スピーディ一行はサイレントヒルの街で武装の整備を完了させ、その後魔導列車を使い西へ移動中だ。


 ちょうどその頃、アンダーゲート要塞が魔族に侵攻され陥落したという噂が耳に入るようになる。


「魔王軍が動き出したようね。空を飛び強力な魔法攻撃を使ってくるのか…何か対策を考えないといけないわね」


「空中からの魔法攻撃はほんま堪忍したってやー。どないせぇゆうねん」


「はー。次はワイドアイランドじゃあないか。ぶちたまげたわー」


 アンダーゲート要塞が陥落したとなると、ガーネットの故郷であるワイドアイランドも次の標的になりかねない。


「ガーネット落ち着いて!アンダーゲートはもう間に合わないけど、協力するから。

お願いだから、ワイドランドまで一人で駆け付けるとかやっちゃだめだからね。約束したでしょ?」


 アンダーゲート要塞だけにとどまらず、魔王軍が勢いに乗ってさらにその先まで侵攻してくる可能性も高い。先を急いで魔王軍の侵攻阻止に協力しよう。


――――


「あーあ。貧乏くじ引いちゃったかなぁ。人間共に後れを取るとは思わないけどぉ」


 火消しファイヤーファイターのフレンダ。


 事件があれば颯爽と現れ、難事件を解決していく江戸川コ〇ンみたいな感じで、いわゆる担当だ。


 しかし、よく考えて欲しい。何故だか知らないが、彼女が現れるところにはいつもしてしまう。


 そう、彼女は事件が起きるまで何も予防や対策をしないどころか、あえて炎上したところへ現れ難事件を解決していく。言いかえれば、炎上しなければ彼女の活躍の場所はない。


 つまり、注目を集め自分の知名度や評価をあげるために、あえて炎上するように仕向けクズだ。

しかも、大炎上はさせずプチ炎上でとどめ適宜鎮火させるなど、人心の掌握術に長けている。そうやって自身の評価を上げることで、四天王の一角まで登りつめたのだ。


「こっちに被害を出すほどマジになる気はないけどぉ、戦果ゼロはちょっと嫌よね。

面倒ごとはさっさと片づけてぇ、さっさと凱旋したいかもぉ」


 アンダーゲート要塞から出征したフレンダが率いる魔王軍は、魔族兵を連れ陸路を進み一路ワイドアイランドの街をめざしているようだ。


 その動きを掴んだスピーディ一行もワイドアイランドの街を目指し、ほどなくして両者が対峙することとなる。


――――


 ここは、ワイドアイランドの街から離れた野原。


 魔族兵を連れたフレンダと、スピーディ一行はここでお互いに対峙する。


 市街地での戦闘は周辺への被害が多すぎるため、魔法を使った戦闘になっても最小限の被害に抑える目的でこの場を選択し、うまく魔王軍を誘導することに成功した。


 しかし、現時点のスピーディ一行はかなり劣勢だ。魔族と人族の身体能力、魔力の差は歴然で即席勇者パーティでは防戦するのがやっとの状況だ。とてもじゃないが、正面対決では勝ち目が見当たらない。何かよい作戦を考えないとまずそうだ。


 そして、フレンダが引き連れてきた魔族兵が多く、こちらの対処だけで手一杯の状況が続いている。フレンダは空中から余裕をもって様子をうかがっていて、戦闘にすら参加せず余裕を見せている。


「勇者といってもたいしたことはないわねぇ。わたし一人でも勝てちゃうかもぉ。

あまりに弱いと、私の戦果にならないからぁ、もっと盛りあげて欲しいわぁ」


 もはやなりふり構ってはいられない。マヤは知謀を巡らせる。


「炎上商法を得意とするなら、で対抗してあげる。見てなさい!」


 罪悪感を感じる作戦ではあるが、ここはなりふり構わず勝ちにいかせてもらおう。


――――


「みんな。指示通り魔族周辺の草木に火を放って。終わったら別の場所もお願い!」


 スピーディ一行は、魔族兵周辺にある草木に対して次々と火を放っていく。常識では考えられない行動だ。


 さすがのフレンダも、思わず口から文句が出てしまう。


「あなた達。自ら放火するとかですかっ!」


 魔族に悪魔と呼ばれる人間とか、火消しファイヤーファイターの目の前で放火をするというとてもシュールな光景が繰り広げられている。


 ご覧の通り、『放火する』のと『消火する』のを比較すると、圧倒的に放火する方がコストが低く、消火する方は非常にコストが高い。


 このように、圧倒的に攻撃側のコストと防御側のコストがだと、コストの低い方が圧倒的に優位となり


 インターネット上におけるフラッドflood攻撃もまさにこれで、やった者勝ちの状況だ。


 さらに、攻撃側を並列処理にすることで、容易に相手を活動停止まで追い込むことができる。


 いわゆる、『DDoSDistributed DoS攻撃』だ。


 フレンダとしても当然このまま焼き尽くされる訳にはいかない。異名の通り必死にをしなければならなくなった。


 しかし、一か所ならともかく、複数人で複数個所に火をつけられたのでは、全くもって処理が追い付かない。


「こ、こんな汚い方法で追いつめられるなんてぇ…不覚だわぁ」


 その後、十分な魔法詠唱時間を確保したガーネットのが放たれ…

『火消しのフレンダ』は大炎上したのち消滅した。


 ちなみに、日本で放火は重罪だ。この異世界でも、市街地でやったら死罪になってもおかしくない。侵攻してきた魔族退治のためやむを得ず緊急避難的に行ったが、他の方法も検討すべきだろう。

もちろん、戦闘後速やかに消火活動を行い、被害は最小限にとどめるようにした。


――――

 教訓: DDoS を技術的に対策するのは難しい。炎上しないよう振る舞うのが

    理想だが、どうしても DDoS 対策が必要な場合はプロに相談しましょう。

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