第27話 サンドボックスは完璧ではない

 『火消しのフレンダ』と戦ってみて気づいたことがある。


 現時点で魔王や魔族四天王と戦うためには圧倒的に足りていないものが分かった。


 まず、空中を飛び回る敵に対する攻撃手段だ。

現時点では戦闘機に対して竹やりで挑もうとしているような状況だ。

強力な攻撃魔法であれば対抗手段となり得るが、魔力には限界がある。


 そして、人族のMPは魔族と比較して圧倒的に少ない。

そのため、が必要だ。


 そして次に、魔族はMPの大きさだけでなく、魔法に対する耐性も強い。

一時的なもので構わないので、だ。


「そやなー。グレートヒルにがおるって聞いたことあるでー

 あと、インペリアルキャピタルに『ひかりのたま』があるって噂やで」


 ペガサスは天馬と呼ばれるくらいで、空中を駆けることができる馬だ。うまく手懐けることができれば空中戦で使えるかもしれない。

しかし、ペガサスは非常に繊細で見つけるのはおろか捕まえるのは至難の業と聞く。


 そして、『ひかりのたま』は相手の魔法防御を一時的に弱める効果のアイテムだ。


 どうすれば入手可能か不明だが、手に入れられるのであれば是非欲しいところだ。


「ワイドアイランドに侵攻してきた魔族は撃退したし、再進軍してくるとしても地上部隊が中心なら援軍で駆け付ければ間に合うでしょう。まず、グレートヒルに行ってペガサスを探してみよう!」


 マヤ達スピーディ一行は、東へ進路を戻しグレートヒルの街を目指すこととした。


――――


 さすがはグレートヒル出身のエミリーというべきか、かなりの短時間でペガサスの生息域の情報をキャッチしてきた。

早速、スピーディ一行はペガサスの生息域に向かい、それらしき生物を発見する。


 しかし、大変なのはこれからだった。


「確か、ペガサスは神経質で気づかれないようにゆっくり近づいていく必要があるんだっけ?。みんな慎重にお願いね。それじゃ捕まえに行くわよ!」


 スピーディ一行は、細心の注意を払いながら、ペガサスに近付いていく…。


 しかし、あるところでふっと目の前の景色が見えなくなりしまった。


「あ、あれ?かなり慎重に近づいたつもりなんだけど、これでも気づいて逃げられてしまうなんて…ペガサスを捕まえるのはかなり大変そうね」


 マヤは、今までの状況からどうしたらよいか考えを巡らせる…


――――


 そう、マヤは気づいてしまった。


「もしかして、私達ペガサスにいて、そこで私達はされたんじゃないかしら?」


 ペガサスを捕まえようといろいろな策を講じるものの必ず逃げられてしまう理由は、スピーディ一行の行動が何らかの方法で先読みされているのではと考えた。


 つまり、現世で言えば仮想環境上に作られたされてしまったのではと推測する。


 幻影を使って攻撃者の振る舞いを見ることで、自分を捕まえに来たのか見極めているのではと考えたのだ。そして、幻影を見ている間におかしな行動があれば、先に逃げてしまうという訳だ。


「なるほどね。これはかなりやっかいなやり方よね。うーん。でも、サンドボックスを使った振る舞い検知だとわかれば、あれが使えるかも!」


――――


 スピーディーの一行は、再びペガサスを探し、先ほどペガサスに逃げられた時とは別の行動を取ることとした。


 ちなみに、エミリーだけには別行動をとってもらっている。


「さて、そろそろペガサスに幻影を見せられている頃かしらね。それじゃ今から食事にしましょう。あと、食事が終わったら釣りでも始めましょうか!」


 サンドボックスは未知の攻撃方法などに対抗する有効な手段ではあるが、部分がある。


 例えば、今スピーディ一行がやっているように長時間無害な行動をとられると、いつまで観測して有害、無害を決めてよいのか判断が難しい。


 無限に観測している訳にはいかないので、あるところで調査を打ち切らないと先の行動へ進めなくなってしまう。


 そして、本来の目的とは別の行動に目を向けさせることで、振る舞い検知をジャミングできてしまう場合がある。


 ペガサスは、長時間食事や釣りをしているスピーディ一行を見て不審だとは思いつつも自分を捕まえに来たとは判断できない。そして、ある時間が経過したところで、振る舞い観測をあきらめて幻影を見せるのを解除してしまう。ここがチャンスだ!


「さて、ここからペガサスを捕まえるために追い込むわよ!みんな協力よろしく!」


 幻影が解除されたのを見極めて行動パターンを変更したスピーディ一行だったが、たとえ幻影がなかったとしてもペガサスは空中に逃げることができる。そのため捕まえることは容易ではない。


 しかし、そこは想定の範囲内だ。あらかじめペガサスの逃走経路を予測して、エミリーに空中まで網を張ってもらっていた。


 そして、そこへうまくペガサスを誘導させペガサスの確保に成功した。


「よっしゃあ。ペガサスを捕らまえたで。これで空中もいけるわ!」


――――

教訓: サンドボックス利用はゼロディ対策にもなる優れた技術だが、完璧ではない。

   他の方式を組み合わせた多層防御を検討した方がよい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る