第22話 生き急ぐ者達

 フランソワーズの活躍により、装備の整備はバッチリ進みそうだ。

時々鍛冶職人と進捗レビューが必要だが、待っていれば無事仕上がってくるだろう。


 その間、近隣のダンジョン等でレベリングをしてもいいのだが、そういえば新しくパーティを組んでから、お互いについて理解するための親睦会をしていなかった。

今日は休養日にして、パーティ内の親睦を深めようと思う。


 何しろ、まだパーティの名前すら決めていない状況だ。今後の活躍が期待できるパーティなのに『名無し』というのはまずいだろう。ちょうどよい機会なので、パーティメンバー全員の忌憚のない意見を聞いてみたいところだ。


――――


「この街に来て、フランソワーズのことはだいたいわかったわ。

次はエミリーね。どうして騎士になろうと思ったのかしら?」


「ほな聞いてくれまっか。えろう話がながなるんやけど………」


 話すと長くなるので要約させていただく。


 もともと、グレートヒルの街で二人組のパーティを組んでいて、相方がボケ担当、エミリーがだったそうだ。


 相方とはいろいろあって別れてしまったが、そのまま一人ツッコミ→鉄砲玉→切り込み隊長と激しい修羅場を潜り抜けてきたらしい。


 ツッコミ続けて技術を磨いていたところ、いつの間にか『』と呼ばれることになってしまったようだ。


 確かに、まだエミリーとは数回しか一緒に戦闘をしたことはないが、敵部隊への切り込み隊長としての活躍は目覚ましかった。

というより、流れ弾に当たるんじゃないかとこちらがヒヤヒヤしてしまう状況だ!


「(おまえもかー。そんな生活していたらあっという間に死んじゃうわよ!!!)」


 さすがにこの話題を続けるのはきつい。ガーネットに話をそらそう。


「と、ところでガーネットはどうなのかしら。さすがにあなたは大丈夫よね?」


 ガーネットは、戦闘より食い気の、ぽっちゃり系の魔導士だ。いまも『あんみつ』を食べている。どちらかというと寡黙で、甘いものに目がない印象だ。


「んー。食べ物以外だと黄色いもんが好きじゃ。誕生石のガーネットとかもほら?」


 えっ、ガーネットって黄色もあるんだ。そういわれて見ると装備も黄色が多い。


「(あかん、こいつも責任を感じて単独で敵地に乗り込んでやられてしまうフラグ臭がぷんぷんとする…)」


 あらためて言うまでもないが、マヤはチート技を使うことすら厭わないほどの覚悟で迅速に魔王を退治しようとしている。

よくもまぁ、ここまで長生きに向いていなさそうなメンバーが揃ったものだ…。


――――


 パーティの名前だが、誰が言い出すこともなく決まった。スピーディー生き急ぐ者達だ。これからパーティで活動するときは『スピーディ』と名乗ることとした。


 マヤは命名の背景説明を端折っているが、今のところおおむね好評のようだ。


 ― 魔王退治をするためなら、どんな手段でも使って迅速に事をすすめるマヤ

 ― ツッコミ続けてはや20年。どんな場面でもツッコミ可能なエミリー

 ― 可及的速やかに魔王を退治し、結婚の夢をあきらめないフランソワーズ

 ― 黄色が大好きな大食漢、ついでに甘いもの好きなガーネット


 この世界で、これだけ生き急いでいるパーティは珍しいだろう。


 パーティの規則は、こんな感じとした。不満が出てくれば柔軟に変更する予定だ。


 ― クエストで得た賞金は、4人で均等に分割する

 ― ドロップアイテムは、見つけたものに優先権があるが、ものによっては応相談

 ― クエスト中以外は、各自自由行動をしてよく、特に制限を設けない

 ― パーティに所属している間は恋愛禁止

 ― 敵地へ単独で乗り込んで戦いを挑まない


 4番目の項目は、約一名がムッとした顔をしたが、そこまで強い反対ではなかったのでスルーさせていただいた。

 5番目の項目については、『アホかいな。誰もそんなことせえへんて』という意見があったが、そのまま残した。というのかあなた達を心配しているんだけどね、約2名の方々。


 もっとも、大量のエリクサーがあるから、仮に死に急ぐような場面があっても何とかなってしまうかもしれない。

でも、こんなことで賭けをしても仕方がないため、規則厳守で進めたいと思う。


「さて、これからはスピーディー生き急ぐ者達の時代よ!魔王退治を頑張りましょう!」

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