第21話 フランソワーズの野望
マヤ達一行は、無事サイレントヒルの街へと到着した。
今までの旅路は山越えなどをする関係で、時間もかかり危険を伴うことが多かったが、帝都からグレートヒルまでの区間に関しては定期的に魔導列車が走っている。
今回、帝都からサイレントヒルまでは半日足らずの工程で済み、途中魔物に襲われるようなことはない。
費用が多少かかるが、今のパーティで金銭的に困るようなメンバーはいないだろう。
もし、費用を惜しまなければならない事情があるのであれば、徒歩で山越えルートを選択することもできる。しかし、当然かなりの時間を要し、山中で魔物等に襲われる危険性も高い。今のマヤ達が選択する必要はないだろう。
サイレントヒルより先へ進むと、当面は工業地帯が続き、鍛冶職人もたくさん暮らしている。マヤ達の目的は、優秀な鍛冶職人を探し装備一式を整えるさせることだ。
もちろん、スキルポイントを『鍛冶スキル』に振ることで鍛冶技能を身につけ、装備を自ら作成することも不可能ではない。しかし、マヤは別に自分で武器を作りたい訳ではないし、鍛冶技能を磨いてこの異世界でスローライフを送りたい訳でもない。
こういった特殊技能は、対価を支払いプロに任せるのが一番だ。
もともと、フランソワーズがサイレントヒル行きをお勧めしていたのは、ここに知己の鍛冶職人がいるからだ。これをあてにするのがよいだろう。
――――
「武器作成の工程は、要件定義・設計4割、製作3割、テスト3割だら。
みんなちゃんとやりん!」
そう、元勇者パーティの装備品は、フランソワーズが工程管理を行い、必要な鍛冶職人を調達、コントロールして作成していたのだ。フランソワーズはプロジェクトマネージャとして類まれな才能を持っているのだ。
『賢者』と呼ばれている所以はここにあったのだ。当然、設計やテストフェーズを軽視するようなこともない。
時間や予算が足りないのは言語道断だが、無駄にバッファを積んでも中抜きされてしまうだけだ。
フランソワーズは、この辺りの見極めが神がかっていて、かつ遅延等トラブルが発生した時のフォローアップも万全だ。
戦闘時は賢者の役目はアシスト役といった印象が強いが、実務にはめっぽう強く、とても使えるメンバーなのだ!
今回、マヤの装備はすべてミスリル装備に新調し、さらにアシスト効果がついた
『バフ』を付けるつもりだ。これで、今後予想される魔族との戦闘でもいくらか持ちこたえることができる。フランソワーズの活躍で最高品質の装備が期待できそうだ。
そして、他メンバーの装備だが、現時点でもかなりよいものを使っていて見劣りするようなことはない。しかし、全ての部位が最高級品で揃っている訳ではない。
鍛冶職人の委託費についてはマヤ持ち、装備品の材料費については装備を新調する各メンバー持ちとして、必要なものを新調することとした。
鍛冶職人の話を聞いたところ、新調した装備が全て揃うまでに3か月ほどかかる見込みとのこと。そのため、現装備のままもう少し西まで活動拠点を広げる予定だ。
――――
ちなみに、しっかり者のフランソワーズだが、常に倹約ばかりという訳ではない。
「ちゃんと貯金しといて、結婚式ではゴンドラで登場して、ガラス張りの魔導車で
新居へいこみゃあか!。うへへ♪」
普段は倹約家であるが、使う時には惜しまないタイプである。しかし、『私、この戦いが終わったら結婚するんだ』とか言い出したら命が危ないタイプだろう。
大変申し訳ないが、魔王を倒すまではフランソワーズの色恋沙汰の芽を摘む覚悟を決めるマヤであった。
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