幕間 魔王復活

 度々、魔王が復活したという話はでているものの、現時点でマヤの転生先の世界で直接的な被害はほとんど出ていない。

そのため、この世界で魔王の実態について知る者はほとんどいない状況だ。


 ここでは、魔王についての話に少し触れておくこととする。


――――


 時間はマヤの転生より少し前に遡る。

そして、とある一人の男について語るとしよう。


 大手IT企業に勤め勤続二十数年、身を粉にして働き充分な成果をあげてきたと思うのだが、最近は非常に分が悪い状況に置かれている。


 会社の上役からは目標数字未達だと激しく責められ、下からは技術のわからない老害だと責められる。


 仕事中心で家族を顧みない生活をしていたためか、家族には蛇蝎のように嫌われ、『部屋で同じ空気を吸うのも嫌だ』と避けられてしまう。


 その他精神的ストレスが多く、ついに髪の毛にも別れを告げられてしまう有様だ。


「俺はこんなところでくすぶってていい人材じゃない!あいつらは何故それがわからない!力だ、もっと力を!俺に全権を委ねれば、世界一にだってしてみせるのに!」


 一人で文句を言ったところで、何かが変わる訳ではない。


 もともと、仕事が趣味のような人物だ。ストレス発散になりそうな趣味や、気を許せる友人もおらず、いつの日かストレス発散のためネトゲで廃課金をすることによって射幸心を満たす毎日に溺れていく。


 ネトゲ内の世界では、のだ。


「IT企業戦士の戦闘力サラリーをなめんな!。デュフフ、まだこの程度では満足できない。力だ、もっと力を!」


 廃課金だけでは満足できなくなり、RMT


 そして、RMTリアルマネートレードで得たゲーム内通貨を使い手下ネトゲ廃人を従え、まるで王様になったかのように振る舞い始める。


「ははは。皆私を敬え!お前達は指示に従っていれば、充分な褒美を取らすぞ!」


 四天王と呼ばれる手下ネトゲ廃人を携え、男の行動はさらにエスカレートする。


「まだまだ足りない!!俺を心から満足させることができる奴はいないのか!」


 目に余る行動に耐え切れなかったのか、その後辺り一面の景色が真っ白に変化し、男は出口のない部屋に呼び出されゲームマスターと対峙する。


「私は、この世界の神です。なぜ呼ばれたかわかりますか?」


「RMTのことか!運営会社だってある程度黙認して収益源にしているだろうが!

俺の目標は、戦いを挑む気にもならないほどの頂点だ。そのためだったら!」


 神は、少ない言葉から行間を読み男の意図を推測し、返答する。


「なるほど、あなたは世界を統一できるほどの圧倒的な力が欲しいのですね?」


 男は、素直に自分の欲望を答える。


「そうだ!どいつもこいつも俺を過小評価し過ぎだ。チャンスがあれば世界統一だって成し遂げてみせる!そうは思わないか?」


 神様は、男の発言の意図を汲み取り、ある提案をする。


「わかりました。そこまで言うならあなたにチャンスを与えましょう。個体としては最強の力を備える祝福ギフトを授けます。あなたの言うとおり、世界を従えてみせなさい」


 こうして、男はするのであった。

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