第5話 二兎を追う者だけが、二兎を得る

『はやぶさの剣-5』をレンタルしたのは、ある実験をしてみたかったからだ。


 そう、マヤは気づいてしまったのだ!


 もともと攻撃力アシスト+5しかない武器に、『-5』レベルのデバフが付いたら一体攻撃力はいくつになるのだろう?単純計算だとマイナスになってしまうはずだ。


 そして、世界に一つしか存在しないレベルの大失敗作を、まさかたったレベル2のマヤが入手・装備することは、この異世界の想定範囲外なのではないかと?


 所持金を増殖させた時もそうだったが、この世界を作った神様は、ちゃんと異常値に対する限界値テストを真面目にしていないのではないかと疑問を感じている。


 マヤは、早速『はやぶさの剣-5』を装備してステータスを確認する。


――――――――

 名前 : マヤ

 性別 : 女

 年齢 : 15

 LV : 2

 HP : 34

 MP : 12

 攻撃 : 222 (3-45)

 防御 : 5 (3+2)

 素早さ: 7


 武器 : はやぶさの剣-5 (-45)

 防具 : ぬのの服 (+2)

――――――――


「やっぱりだわ。とんでもないことに!!!

 演算後キャリーフラグのチェックを忘れているようね」


 つまり、攻撃力 222 という『』を持ちながら『』というバランスブレイカーな武器誕生の瞬間である。しかも、マヤが取り扱うことができるほど軽い武器だ。


 こんなものをレベル2のマヤが振り回せてしまうということは、もはやそこらに現れる魔物程度であれば、相手の攻撃を食らうことなく一撃で瞬殺できてしまう。


「さて、これからは廃レベリングの時間ね。腕がなるわ!」


――――


 マヤは HP 回復ポーションを限界まで買い込み、

 魔物の出る森にこもり、ひたすら敵を狩る!!!


 素材やドロップアイテムも興味なく捨て置き、

 ポーション片手にただひたすらに魔物を狩る!!!


 ほとんどの敵が先制攻撃で倒せてしまうので、正直一方的な殺戮マシン状況だ。


「さすがにレアドロップくらいは回収しておこうかしら。何か使い道あるかも。

このままだと、この森の魔物は狩りつくしてしまうかもしれないわね!」


――――


 そうして、街に戻る時間すら惜しんで山籠もりする生活を約3か月過ごした。その結果、攻撃力がラップアラウンドするぎりぎりまでのレベリングが完了した。

「さすがにベットで眠りたいわ。それにしてもだいぶ強くなった気がするわ」


――――――――――

 名前 : マヤ

 性別 : 女

 年齢 : 15

 LV : 30

 HP : 153

 MP : 108

 攻撃 : 255 (44-45)

 防御 : 33 (31+2)

 素早さ: 100


 武器 : はやぶさの剣-5 (-45)

 防具 : ぬのの服 (+2)

――――――――――


 こうして、マヤは通常あり得ない速度での廃レベリングに成功した。


――――

 教訓: 演算後のステータスレジスタ確認は忘れずに実施しよう

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