第6話 明日から本気出す

 約三か月間の山籠もりを終え、マヤは久しぶりの休養期間に入る。

まずは、ノースランドの街に戻って高級な宿屋で2日ほど爆睡することにした。


「3か月振りのベッドがこんなに気持ちいいなんて!それではおやすみなさい…」


 食事もとらず出かける様子もない変な顧客だと思われるだろうが、料金はきちっと先払いしており手間はほとんどかからないはずだ。

何て宿屋に都合のよい顧客なんだろうと思わなくもないが、このぐらいの贅沢は許されてもいいはずだ。


 その後、精神的に落ち着いたところで好事家のウィリアムさんを訪ねる。

今回の訪問目的は、レンタルした『はやぶさの剣-5』の返却とマヤの今のレベルに見合った無難な装備を見立ててもらうためだ。


 レベル30まであがったので、今の装備でこれ以上レベルが上がると攻撃力がラップアラウンドしなくなり二回攻撃できるだけの最弱装備となってしまう。


 以前と違い今のレベルならば、伝説級や神話級の武器でなければ取り扱うことができるはずだ。だからと言って、以前のようにあまりにも無知なマヤが店を訪れて無茶ぶりするのは避けるべきだと考えたのだ。


 そのため、今のマヤに合った装備を見立ててもらおうという訳だ。

レアもの繋がりで結構仲良くなったし、高額なレンタル料も支払っているのできっと大丈夫だろう。


 ウィリアムさんであれば、金銭感覚はともかくとして今のマヤの外見にマッチした装備を見繕うのはたやすいだろう。いくら強くても、この世界の美的センスから大きく逸脱した装備で冒険を続けるのは避けたい。


 このままのペースで冒険を続ければ、ある程度噂が流れるのは避けられなく、その時はスタイリッシュでありたいのだ。そもそも、3か月前には初級装備ですらまともに扱えなかったマヤが、こんな短期間で扱えるようになったと武器屋に知られるのも望ましくない。この際、多少の手間賃がかかってもよいので、ウィリアムさんに装備品の調達まで任せてしまうのも悪くないだろう。


「お久しぶりです、ウィリアムさん。本日はお時間をいただき感謝いたします。

お約束通り『はやぶさの剣-5』はお返ししますね」


「おお。もしかしてもう飽きてしまったのか?。あれから他にもいろいろレア装備を集めたのだが、今から見てみるか?」


 相変わらず話が長くなりそうだ…。まぁレアものは嫌いではないし、これからの冒険に役立つものがあるかもしれない。とはいえ、話は参考になるがコレクションのレア装備を売ってくれる訳ではないので、ほどほどにしておこう。


 そして、ウィリアムさんの助言に従い少しだけレア装備を混ぜた装備を揃えることに成功した。


 これで、外見だけ見れば羽振りがよく、装備の力に助けられながらも活躍する新鋭の冒険者といったところか。そして、スタイリッシュで印象がよく、少なくても悪目立ちすることはないだろう。また、実力としても普通の魔物と対峙する程度ならそう簡単にはやられなく、難易度の高い討伐クエストを受けない限りは当面大丈夫と言えそうだ。



 ――――――――――

 名前 : マヤ

 性別 : 女

 年齢 : 15

 LV : 30

 HP : 153

 MP : 108

 攻撃 : 94 (44+50)

 防御 : 76 (31+20+10+15)

 素早さ: 100


 知名度: Fランク


 武器 : サーベル+1 (+50)

 防具 : はがねの鎧 (+20)

 頭  : はがねの兜 (+10)

 盾  : はがねの盾 (+15)

 ――――――――――


 ちなみにレベル30という数字は、有名冒険者でも到達まで10年はかかる数字だ。

仮に10才から有名パーティに所属してパワーレベリングしたとしても到達時には20才と考えると、マヤがいかにチートか分かるだろう。


 そして、今まで触れていないがレベル以外に『知名度』というパラメータがある。Fランクが一番下で順に Aランクまで、さらに上に Sランクの計7ランクが存在する。


 先ほど例にあげたような活躍をするルーキーだったら、レベル30に到達したときにはかなり知名度が上がっているはずである。しかし、マヤはまだ冒険者ギルドにすら登録していない。マヤはレベル 30とは言えクエストを一切受けておらず、外敵から人間や街を守ったなどという成果もない。


 冒険者としては何も成果をあげていないのだ。当然今も Fランクのままだ。


「今からギルド登録に行って最初からレベル30ってのは不自然よねー。ずっと山奥で修行していて、街に出てきたばかりな田舎者の設定で通じるかな?」


 とりあえず、冒険者ギルドに登録する際のストーリーはできたが、いざ魔王を倒そうと考えた場合まだいろいろと取り組まなければならないことが多そうだ。


「冒険者登録するとして、Fランクじゃ討伐系クエストは受けられないわね。

これからどうしようかな…」



――――


 一旦クエストの件は先送りして、スキルポイントを使ってスキル(魔法)を覚えたいと思う。


 レベル 30 まであげてまだスキルポイント割り振っていないため、かなり溜まっている。得られるスキルの種類も豊富だが一つのスキルに最大10スキルポイントまで振ることができるため、種類の多さを重視するか効果を重視するかなど選択の幅がかなり広い。


「爆炎魔法に極振りとか面白そうね!。防御魔法に極振りも捨てがたいわねー」


転生前から中途半端ではなく極振り大好きなマヤであったが、ネトゲとは違いやり直しはきかないのでかなり悩んでいるようだ。


「でも、魔法数回でMP切れで役立たずになってしまうのは好きじゃないわ!

MP消費が少ない割に強力な攻撃魔法はないのかな?」


 MP消費の観点で優れている攻撃魔法を探してみることにする。


「………おおっ。この魔法はすごく使えるかも!『カミカゼ』っていうのね!」


自己を犠牲にした攻撃魔法、『ドラ〇エ』で言うところの『メガ〇テ』だ。

命と引き換えに敵に大ダメージを与える魔法で、MP消費は1という優れものだ。


「こんな事もあるかと思って…大量のエリクサーを準備しておいてよかったわ!」


 相変わらずバランスブレイカーな状況だ。恐らく、大量のエリクサーとカミカゼの組み合わせ利用は想定の範囲外だろう。今の時点でマヤが『カミカゼ』を連発なんかした日には、再び神様にバレて呼び出しをくらうかもしれない。ご利用は計画的にしなければならない。


 10スキルポイントを『カミカゼ』に割り当て、残りのスキルポイントは一旦保留することにした。

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