第2話 魔術師 試す
翌朝、まず始めに庭に向かった。
庭には幾つかの薬草の他に植物モンスターを飼育している。その中の一体であるマンイーターの中に、レッドリザードの骨を取り出すために入れる。
昼頃には骨だけになってるだろう。
マンイーターはウツボカズラに似たモンスターだ。蔓をムチのようにして人や動物を捉えて消化液で溶かし食料にする。
庭にいるマンイーターはムチとなる蔓を焼き潰してあるので襲って来ることはない。維持管理には日光と定期的に鳥を一羽放り込むだけで良いので管理は楽だ。
ついでに他の植物から薬草を刈り取って家へと戻る。
朝食はドライフルーツを自家製のヨーグルトに混ぜて焼いたパンに塗って食べる。パンの香ばしさと酸味の相性は良い。
朝食を食べ終えたら、昨日切り取った肉付きの肋骨を知り合いのやってるラッセン食堂に私に行く。
「よぉ旦那!朝からやってくるなんて珍しいな!何か持ってきてくれたのかい?」
食堂で声をかけてきたのはこの食堂の店主ラッセンだ。彼は一度チンピラに襲われた所を助けてから私を「旦那」と呼んでくるようになった。(何度か辞めるように言ったが治らないので諦めた。)
「やぁラッセン。今日はレッドリザードの肉を持ってきてね、昼頃食べたいから調理を頼みたい。私の分以外はいつも通り好きにして構わないよ。」
「レッドリザードの骨付き肉か!良いぜ、スープとステーキにしよう!スープは少し煮込みたいから昼過ぎに来てくれ!」
彼の料理の腕は信用してる。時々上手いモンスターの部位を持っていき彼に調理を頼んでいる。
昼過ぎに向かう事を伝え、家へと戻る。
今日の午前中にやってしまいたいのは火袋の解体だ。竜種の喉には火袋と呼ばれる器官があり、火袋には爆発する液体が入っている。ブレスを吹く時には少量を火袋なら口の外へと飛ばし肺から送られるガスに着火させ火を吹くのだ。
家の地下室へと戻り私は火袋の解体を行う。かなり慎重に作業せねばならない。衝撃が加われば液体が爆発すれば私の顔くらいは簡単に吹き飛ばすだろう。
慎重に袋を開き中の液体を魔法でビンへと詰めていく。
「これで最後だ…」
思わず独り言を漏らしてしまった。それだけ緊張したのだ。だが緊張した甲斐があった物で親指サイズのビン一杯の量が手に入った。今まで集めてきた量を含めて要約目標量に達した。
私はさっそく、棚の一番上に置いてある木箱を取り出し、中を開ける。
箱の中に入っているのは銃と薬莢だ。ここまで来たら皆さんお分かりだろう、転生あるある[銃の作成]だ。既に銃自体は出来ている。中折れ式で一発しか撃てないが、かまわない。
早速薬莢に液体を注ぎ弾頭で蓋をする。
出来た弾丸は全部で15発、早速試してみよう。
試そうと早速近くの山へと飛んでいこうと外に出たが、昼過ぎになっていたためラッセン食堂へと向かう。
「やぁ、ラッセン言われた通り昼過ぎに来たよ。」
「おお!旦那待ってたぜ!今、調度スープが完成した所だ!席で待っててくれ」
どうやらタイミングバッチリだったらしい。席で待ってるとステーキとスープが運ばれてきた。
ステーキは肋骨付きで油が染み出てくる。
スープは乳白色で私から受け取って直ぐに鍋にかけたんだろう。
早速いただくとしよう。まずはステーキからだナイフで切り分けて口へ運ぶ。
(ジューシーで上手い。)
思わず笑みを浮かべてしまう程の上手さだ口の中が旨味で溢れている。
次はスープだ、一口スプーンで啜る。
(濃厚で染みてくるな)
骨の旨味がしっかりスープに溶けており濃厚で柔らかい味だ。
やはりラッセンの腕は素晴らしい。
私は昼食を食べ終わり食堂を後にする。
家へは向かわず魔法で近くの山へと向かう。この山は珍しいモンスターや薬草等も自生していないため冒険者の姿は無い。
山の中腹へと向かい適当に開けた場所に着地した。一応冒険者はいないが万一を考えて周囲に人払いと無音の結界を張る。これでこの中の音は周囲には聞こえない。
結界の内部に人がいないことを確認し適当な木に向けて銃を構える。一応予備の銃も用意しているが壊れて欲しくないため、銃に強化魔法を掛けてから発砲する。
ズドン!!
「っ!」
思った以上の衝撃で尻餅を付いてしまった。銃を確認すると薬莢は空のため、発砲はされたようだ。銃も大きな歪みはない。一応木の方を確認すると、狙った箇所から大分外れた位置がえぐれていた。
(この威力ならモンスターにも使えるな、射つさいには自身にも強化魔法を後、銃事態にも制御魔法を刻んで精度を上げよう。)
とりあえず、改善点は発覚した。今日はこの辺で良いだろう。
「ん?」
家に向かうと家の前に誰かが待っているみたいだ。私は家の手前で着地し待ち人に声をかける。
「この家の人間に何かようかな?」
待ち人は此方を振り返った。
「私、王立学院で事務を勤めてるポーロと申します。レリック様にようがありまして。」
私は彼女の言葉を聞きながら王立学院の馬車がこの街にやって来たのを思い出した。
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