第3話 魔術師 スカウトされる

「単刀直入にいいます。王立学院で講師をしていただきたいのです。」


「王立学院の講師?私の様な冒険者で平民に勤まるとは思えないな。」


 彼女はリビングに通し、お茶を出した所で訪ねてきた目的を伝えてきた。

 王立学院の講師は魔術師なら宮廷魔術師と同じくらい憧れとなる役職だ。給料も良く、設備も申し分ない、魔術研究を行うなら最高の環境だろう。しかし、講師になる人間の殆どは貴族だ平民の、しかも冒険者がなるのは稀だろう。


「レリック様はこの学院の卒業生ですし、ソロ魔術師でAランクまで登り詰めた実績がございます。[火嵐]の名前は学院でも有名ですよ。」


 [火嵐]は私の二つ名だ、冒険者中でも有名な人間は二つ名をつけられることも多い。自分で名乗る奴もいるが、私はAランクになって暫くしてあった大規模討伐での活躍からだろう。


「それと、身分の事ですが二年前に魔術ギルドに提出した創作魔術がギルドに認められていた、王国魔術書に記録されることになりました。その功績から一代のみですが騎士爵を国から授与されることになりました。」


「は?二年前のが今更認められていただと?

…聞いてないぞ。」


 魔術師ギルドとはこの国の魔術師全員が所属するギルドで、二年前に気まぐれで作った魔術を提出したのだ。その時は特に反応は無かったが王国魔術書に認められていたとは…。

 王国魔術書は国が後世に残すべきと認められた魔術のみを保存する魔術書だ。これに認められる事は魔術師にとって名誉である。


 「…実を言いますと二年前に認められた時は登録者が別の人間でして、一年前に講師として依頼する際に調査した結果、盗作で有ることが判明。更に調査を続け貴方に辿り着いたのです。」


 どうやら提出した魔術はギルド内部で盗作されたらしい。更に詳しく聞くと犯人は貴族で私の魔術の実用性に気付き盗作し発表。王都で 金と名声を手に入れたらしい。

 名誉はどうでもいいが金は大事だ。研究は金がかかる。


「国はレリック様の権利で有ることを発表しており、この二年間で魔術権利で得た財は全てレリック様の物になります。」


「不正の件については色々世話になっていたみたいで感謝しよう。私が講師の条件に問題ないとことも分かった。」


 私が講師になるには問題ない事は分かった。だが、依頼される理由を聞いていない。


「今回講師を依頼する理由としては此方の講師に空きが出来た為です。教授の1人が病気で静養するため学院を離れることになり、その影響で講師が足りなくなりまして、調査の結果を含めて依頼することになりました。」


「雇用条件としては研究室の提供と各学院期間の施設の使用、図書館の教授レベルまでの閲覧許可です。閲覧許可はエリック様の今後の実績を考慮したものです。」


 待遇は実質教授レベルのモノだ、実績を理由をしているが本音は運営側の派閥に取り込みたいのだろう。恐らく空いた教授席に座った人間は運営派ではなく魔術ギルド派なのだろう。思わくはどうでもいいが、設備は正直有難い。王国魔術書の事でも恩がある。

  

「了解した、講師の件喜んでお引き受けしよう。」

 

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