第6話
とにもかくにも世に生きるなら金である
金がなければなにも出来ないのが世の常識
さて、どうするべきか…
「主様は元女性なのですよね?」
なんだ突然、今は
「女性らしくない口調でしたので、情報に差違があるのかと」
「む、それは私がアラフィフ好きだからだろうな、ゲームでもアバターは男キャラでやってたし」
自分には男性への憧れのようなものがある。
正直、男性の方が女性には羨ましい部分が多いと思う、生理とか無いし、下着も楽そうだし、化粧品とか使わない人は使わないだろうし
うん、男の方が良いじゃない
「アバターと言う言葉は知識としてありますが…やはり知っている事と情報は違いますね」
眷属であるエリザβは自分がいた前世の情報を得ている。
どの程度の知識があるのか、少し話してみたが、どうやら情報と認識が合わなければその知識が何なのか解らない事が判明。
教えて知識をてらし合わせてゆくのは簡単だが、やめる。
今、問題なのは資金、それを稼ぐ方法だ、手段としては何処かの学者なんかを利用してしまったり、お金を持ってそうな奴に成り代わったりすれば良いけど、まずは…
「エリザβ、この町には学者か何かはいないか?」
この世界の時代や発展を考えると学者、文明を発展させる知識ある者を見つけて、話してみるのが良さそうだと、私は考えた。
RPGでは話を聞くのが基本!
ゲームに染まりきった私の
「学者…そうですね、たしか1人います。
ハーバードと呼ばれる医学者が、教会跡を研究所にしていると」
「ハーバード?」
聞き覚えのある名前だな…
あっ映画のヤツじゃん!
死者蘇生のハーバード・ウエスト!
クトゥルフ…というよりHPLの関連の人か…
そのまんまならヤバいどころの話じゃねぇな
「どうかしましたか?」
おっと、顔に出てたか
…ウエストの情報合わせは必要ないかな
知識として持ってるとは思うけど
何より私の価値観や常識をエリザβには持ってほしくない、この世界の生まれであるエリザβの価値観を大切にしたい
「いや、何でもない、行こうか、その医学者に会いに」
エリザβは「はい」と答えて教会跡へと案内する。
しばらくして、教会跡にたどり着いた。
ハーバード医学研究所と書かれた立札を確認し、教会跡を見回す。
元は教会であった名残は無く、ほとんど建て直しているようで、外観は味気無い建物となっている。
ドアをノックして待つこと数秒、白衣と
彼女にハーバード氏に会いたいと伝え、研究所内の客間へ案内され、待つこと20分
「なかなか来ませんね」
少し暇そうに座るエリザβを撫で、会ったときどうするかを考えていると、ガチャリとドアが開く
「はじめまして、私がハーバード・ウェストと言います。
この研究所の所長でもあります。」
ハーバード氏が丁寧な挨拶をしてくれているのだが
私はそれより彼の一部に目が行ってしまう、エリザβも驚いたように見ている。
これは、そう、何処かで見た覚えがある。
たしか
「シェパード…」と、思わず口に出してしまう
ハーバード・ウェストの顔は犬、シェパードの顔であった。
似ているとか雰囲気ではなく、シェパードの顔が人の体と結合している。
言葉を聞いたハーバード氏は「よくお分かりで」と、嬉しそうに言った。
「この頭はね、半年前に死んでしまった愛犬の頭でして、なかなか美形でしょう?」
嬉々と話す彼に多少の狂気を覚えた。
エリザβの顔にも恐怖…いや、動物の顔に興味津々で目をキラキラと輝かせている。
「あの、さわってもヨロシイデショウカ!」
「ははは、どうぞ、レディ」
目の前のふわふわした毛並みに抗えず、ハーバード氏の顎をモフモフするエリザβ
その顔は幸福に満ちあふれている。
エリザβがモフり終わるとハーバード氏がエリザβの頭をなでて返すと、ハーバード氏はこちらに向かって話始める。
「この頭にしてからね、少し敏感になったんですよ」
「敏感…ですか」
「ええ、匂い、音、風の流れ、様々です。
特に変化したのは獣の勘、第6感というものですかね」
第6感と聞いて(まあ犬だからな)などと考えた。
この平和的な思考が出来たのはここまでだった。
どの辺りからだろうか、それともまだ気づいていない事を踏まえたブラフなのだろうか、ハーバード氏はその獣の顔で言う
「貴方は、何、なのですか?」
何者ではなく、『何』と聞かれた。
人への質問にしては的を得ない言葉、
私にとって致命的な言葉、
私がこの状況で考える事は、本来ならば色々あるのだろうが。
この、序盤でクリティカルを出したプレイヤーのシナリオブレイク行動、TRPGでもやられるとキーパー大迷惑な状況を現実で行われると、当事者、いや、邪神側のメンタルが人間性バリバリだとこの先の展開に目を瞑りたくなる。
さて、どう切り出すか
「主様は勇者を見つけて魔王を倒させるために動いています。」
エリザァ!?
そうだけどそうじゃないぞエリザβ!
相手の質問に答えてないぞエリザβ!
エリザβの話に興味深そうな仕草を見せるハーバード氏を見てエリザβは私にドヤ顔をする。
「エリザβ、何かを聞かれているのに目的を先に言ってはいけないだろう?」
私は、出来る限りの紳士を取り繕ってエリザβを黙らせようとした。
エリザβは言われた言葉に気がついて「申し訳ありません」と言って謝罪、それを見て少し安堵、改めてどう切り出すかを考える。
「主様は邪神であらせられます。」
エリザッ…!?
威厳とか…邪神の立ち回りとか…色々、考えたんだよ?
エリザβのポンコツ過ぎるだろヤバい
ハーバード氏は獣の顔でじろじろ私を見ている
やめてくれ、今は恥ずかしいからやめてくれ
1~2分くらい時間が欲しい…
この悪夢のような中エリザβは渾身のドヤ顔をキメていた。
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