第4話

転神してから70年たった(ほぼ他人の人生)がイマイチ神なのか疑わしくなるくらい何もしていない事に不安になってくる今日この頃

花子は森をエリザα(ショゴス)と歩きながら今後を考えていた


70年【彼女】だった事でこの世界を人並みには知ることができた

年代は元の世界で言えば16世紀~19世紀頃で

、この世界には科学と魔術の2つが同時に発展している事や、この二つは互いに反発する事無くちょうど良い具合に成り立っているようで、科学側と魔術側が小競り合いするような事はないようだ

ただ、妙な発展をしている

この世界の科学文明は蒸気と電気が主流で、汽車があると思えば携帯通信機があったり

ネオンが照らす下で蒸気自動車が走るという異空間じみた世界だ

魔術の場合は神聖魔術と人理魔術というのが主流らしい

神聖魔術が神のもたらした自然の力を軸に使う魔術で、人理魔術が人が創造した新しい魔術

だそうだが

【彼女】の人生では魔術にふれることは無かったので知識としては魔術がある事しか今はわからない

ついこの前に覚えた人造人間という術はどちらかと言えば人理魔術なのか?


そう考えつつエリザαへと目を向ける


【エリザαは蒸発しかけている!】


「エリザァアアアアアアア!!」


生まれたばかりだからなのかはわからないが少しずつ小さくなっていくエリザαを見てどうしたら良いかわからずにあたふたする事しか出来ない


「エリザ!大丈夫か!?」


『旦那、俺は…もうだめだ』


「エリザ?!!」


『聞いてくれ、人造人間の術はまだ不完全なんだ、出来るだけフレッシュな遺体を使え、血肉も動物よりもっと質の良いのがベストだ…』


「エリザ…」


『へ…弱々しいな、あばよ、次のヤツは大事にしな…』


喉太い声を最後にエリザαは消滅した


「エリザアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


(衝撃的な音楽)


エリザαが喋った事や喉太い男性の声であった事などはどうでもよくは無いが、少なくとも悲しくあるべきなシーンだと私は空気を読んだ


後、しばらく森を歩いていると人の声が無数に聞こえてきた

どうやら小さめの町にたどり着いたようだ

大きな木製のバリケードで守られた小さな町

門には門番が二人ほど

【彼女】に変わって通る事も出来るが、女1人というのは少し怪しくはなかろうか

そう思い、夜になってからバリケードを飛び越えて、町へと侵入した


念のため【彼女】に為り町を歩きはじめる

薄暗がりにちらほら街灯がぼんやり並んでいる

バリケードから離れて中心に向かうほど建物がしっかり作られているのがわかる

そして一際目立つのは中に浮く逆三角形の何か


「なんだあれ」


バリケードの外からは見ることが出来なかった事を考えるとなにか超常的な、もしくは神秘的な何か、そう観察する


「やあ、お嬢さん、こんな夜更けにどうかしましたか?」


声に驚いて変な声で返事をしてしまった

話しかけてきた相手がクスクスと笑う

あらためて見れば二人組の美しい男女だった


男はハットに銀の短髪で黒いタキシードのような作りの服に赤い手袋と革靴、シャツも赤だ

女性と腕を組み相手を魅了するかのような顔立ちでこちらに微笑む


女は金の乱れた長髪で白いドレス姿

腕には緋色の腕輪、この女性も絶世の美女と考えてしまうほどの顔立ちでこちらに微笑む


「フランクス、駄目じゃない、彼女、突然話しかけられて驚いているわ」


「ブレンダ、すまない」


「フランクス、私に謝るのは違うでしょう?」


「ブレンダ、そうだな、ミス、突然声をかけてすまなかった、どうか許してほしい」


深々と頭を下げる彼にあわてて返事をする


「い、イエイエ、心配してくれたんですから謝らないでください!」


「フランクス、良かったわね」


「ああ、ブレンダ、良かったよ」


「あの、少しよろしいでしょうか?」


「あら、何かしら」


この流れならあの三角とか聞けるかもしれない


「あの三角のはなんなんでしょうか?」


「三角…オベリスクの事かしら」


「オベリスク…?」


「ミス、魔術はご存知か?」


「はい、見たことはありませんが」


「オベリスクは一定の魔力…正確には人の集まる場所に生まれる魔力の蜃気楼のようなものですよ」


「なるほど…」

つまりコミマ雲だと


「オベリスクは人の集まりによるのだけれど、多ければ多いほど遠くから見えるのよ」


「ミス、町や都市への目印としても使われているのですよ」


「なんだか、スゴいですね」


何だかファンタジーになってきてワクワクしてきた

二人の話を聞き終わると男の方から《チンチン》とベルを叩く音が聞こえた

男が上着の内側へ手を入れ懐中時計に似た何かを取りだして耳に当て話はじめる


「はい、フランクス公爵…ああ、わかった…そうだな、そうしよう、では」


電話かそれ!カッコ良い…スゴくカッコ良い…!


「ミス、楽しい話はここまでのようだ、私的な用事が入ってね」


「いえ、こちらこそ話をしていただきありがとうございます」


「ウフフ、これ、あげるわ」


微笑みながら女性が渡してきたのは拳銃だ


「うえ…!コレ?!」


「夜は危険よ、今日は私達みたいな変わり者だから良かったけれど…気をつけなさいね」


「ミス、その銃は質量光線銃だ、この町のオベリスクなら問題無く動作するだろう、しかしオベリスクの無い所では回数が限られる、覚えておくと良い」


そう言い残し、彼らはコツコツと町へ消えていった


何か不思議な二人組だな、夫婦かな

ひとまずオベリスクその事は聞けたし

裏路地通って真ん中まで行くか


裏路地ではやはりというかなんというか

表通りとはガラリと雰囲気が悪くなる

飲んだくれやいかにも悪そうな面構えの奴ら

【彼女】の姿をじろじろ見る奴らはケダモノだ

そんな劣悪な場所に子供を見つけた

ぼろ布を着て下着も付けずにゴミを漁り

食べ物か汚れかも判別出来ないモノを口に頬張り食べていた


「ねーちゃんベッピンさんだねぇ?」


「あの子の名前何?」


「ナンだぁ…子買いかぁ?やめとけやめとけ、クォールはダメだ使い物になんねぇよ」


「なぜ?」


「アイツは金も親も何もかもに見捨てられた這いつくばる悪魔…ダカラヨォ、誰も引き取らねぇし、過去にある一家引き取られてたがその一家も全部失って心中さ、クォールだけは生きてるがな、」


這いつくばる悪魔、身寄りがない子供

なるほど、コレは


「凄く良いね」


喋っていた男が驚いた様子で私の顔を見ていたが私はこの子、クォールを見ていた

一歩、また一歩近づく


「お嬢ちゃん」


私は優しく微笑み、語りかける

頭をなで、私は


「一緒に来ない?」


【新鮮な素材】を手に入れた


クォールはニコリと笑った

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