第3話
「好きだ」
そう言われてとても嬉しかったけれど
その返事に答える勇気は私には無かった
「か、考えさせてください」
彼の想いに迷ったまま答えるのはいけない事
私の決心がつくまで待ってて
くれなかった
彼は町へ行き何処かの女性と結ばれたらしい
だから、私は森の毒草を使って彼を亡き者とする事にした
私は1人で森に入って行き、毒草を集めていたのだけれど
自分を見失っていたからか、森の深くまで踏み込んでいる事に気がつく事ができなかった
岩のようなウロコを持つ怪鳥
村では度々奥地に入った者が襲われるため、奥地へ入る事を禁止していたの
「だから、私は死ぬ運命なのでしょう
怪鳥によって空から落とされた時
そう考えたの
でも生きていたのよ
空高くから落とされ、地面に叩きつけられたのに、私は軽傷で倒れていただけだったの
私はすぐに森を去ったわ
村へ帰ると、みんなが私に駆け寄ってきて心配してきてくれて、涙が出てきてね、とても安心したの」
「おばあちゃん、大変だったんだねぇ」
「ねぇー」
暖炉の前に座る老婆は二人の子供にてを伸ばし、微笑みながら頭をなで、話を続ける
私を捨てたと思っていた彼が戻ってきた事
親同士の決めた結婚を振り切って
男として私を選び、実家を捨てた事
結婚して、子供を産み、こうして孫に話をする
私は、とても幸せな人生を終えたのだと
先に行ってしまった彼に、伝えてあげよう
老婆は死に、一つの人生が終わった
《本来の彼女が送る事がなかった未来を終えた》
雨の降りしきる中
老婆の遺体が埋められた墓地に怪しげな人影
黒いマントに漆黒の杖、独特なとんがり帽子
誰が見ても明解なその姿は魔女そのもの
魔女は何も喋る素振りを見せずに杖を静かに地面に立てる
雨がその場で静止し、場の音が消滅する
地面に立てた漆黒の杖に燃え下がる黒炎が現れる。
一帯の光を呑み込む黒炎の闇は視界を埋める輝きを放つ、そして雷のような轟音が響くと
目を埋め尽くすような闇は瞬く間に無くなり
全てが無かった事のように雨が降っている
「おひさしぶりね、もっとも、会ったのは貴女ではないあなたなのだけれど」
魔女がそう墓に喋りかけると
ぼこぼこと墓から異形の者が現れる
「色々言いたいけどまず一言良い?」
異形は魔女に確認を取り、魔女はコクリとうなずく
「長げェすごい長い人生終えるまで他人になったままとか信じられないしそもそも意識も無くなるとか知らないしなれば解るってミ=ゴの言葉は嘘じゃねぇんだけどもう少し注意してほしかった!!」
異形…もとい転神者の花子は一気に不満を吐き出してから魔女に話しかける
「あんた誰」
「私はフィト、さまよいの森に住む不動不滅の魔女」
「さまよいの森、じゃあここはあんたの森なの?」
「いいえ、さまよいの森は今、この世界に無いわ」
「…?」
「森は次元をさまよっているの、入ったら迷う森じゃなくて、森自体がさまよっているのよ」
「ああ、なるほど…ならあん…フィトさんは次元を移動してる魔女か」
「正確には私は分身で、本物は今も森に居るわ」
「わざわざ分身なのは不動…森から動けないってことね。不滅は何となくわかるからいいや
それで、フィトさんはなんのために接触してきたんですかね?」
「私は森から分身をあらゆる世界に置いていくの、観測(暇潰し)のために、基本的にはその世界に手を出す事はないのだけれど、今回は珍しい事象だったから来たの」
「そうなんだ、でも私はなったばかりだから何も知らないし、知ってるのはもう死んだ彼女の記憶と姿だけ」
「いいの、貴女の事はもうさっき調べたから、それで満足」
「あっ…そう、じゃあお礼に何かくれても良いよ?」
【花子は吐き気をもようすほどの図々しさをおこなった!】
…
50秒程の静寂が一帯を包む
まずったかもしれないわこれ
「わかったわ、なら術を1つ教えてあげる」
良かった、怒ってない!(ようには見える)
「術!ファイヤーとか!サンダーとか!?」
「人造人間の作り方」
「ヌフゥ…(泣)」
いや、自分ニャルだし?マトモに魔法とか使えるかもって期待したよ?ファンタジー世界でバリバリ魔法使えると思ってたよ?
でも異世界で初めて使える術が人造人間って!
神的に使えると思うけど!思うけど!
なんかこう…なんかさあ!
色々考えてる間に術の習得が終わった
「じゃあ、私はこれで」
フィトがスッと自然に去っていく姿を花子は手をふって送った
邪神が手をふって送るって、絵面ヤバイなこれ
フィトがいなくなったあと、私は墓地の遺体を使って先ほどの人造人間を試してみることにした
適度に朽ちた人体に動物の血肉
そして呪文を唱えるだけの簡単な人造人間づくり!
「漫画とかだと色々代償あったりするけど、良いのかこんな簡単で」
ぶつくさ言いながら呪文を唱える
ごぼごぼと腐肉と動物の血肉が溶け合っていく様は不快な気分にさせる
しばらくすると黒ずんだ肉塊へと変貌し
耳を傾けると鳴き声が聞こえる
『テケり…リ…』
「ショゴスじゃねーか!!」
【人造人間(邪神アレンジ)製造を行った!】
「レシピ通りに作ればいいのにアレンジ(邪神)入っちまったじゃねーか!
しかも自動的にアレンジ(邪神)入るからショゴスしか出来ねぇだろこれ!」
初めての魔法は腐肉と神のイタズラ(セルフ)によってショゴスをもたらした
仕方なくこのショゴスにエリザαと名付け
森へと進んでいった
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