第2話

直射日光による攻撃から逃れた私ことニャルラトテップは人を探して森をさ迷っていた

歩きながら身体を調べていてわかった事をまとめてみる

まず、身体が軟体だということだ

まるで骨格があるように歩けるけど、実際には皮膚が引き締まって昆虫のように外骨格化している

さらに、触手のように腕や身体の様々な部分を裂くこともできる

ただ、皮膚が日光(たぶん紫外線)に弱く日中はこの姿で歩けない

次に頭は、首から上がオレンジ色でスライム状の頭部になっていて、ものすごくポヨポヨしている

視覚や聴覚、嗅覚はおそらくこの部分なのだろうか?

あとひとつ、ニャルラトテップの能力でもあり真骨頂といっても良い変身能力なのだが

どうやら架空のモノや、想像力では人間になれないようで、まったく変身できないことがわかった

ただ、存在する動物には変身できたので

人間に出会えばその人間になれると推察した


今はシカに変身して森を走っている


「ああぁ~走るのたのしい~」


動物に変身すると少し頭が弱くなるみたい

でもたのしいからどうでもよいか!


しばらく走り回った後


「どうでもよくないし」


変身を解いたら思考が正常になり少し落ち込んだ

今のところは人工物は無かったが

かわりにゴブリンのような小鬼を見かけた

あんなモンスターがいるならやはりこの世界はファンタジー世界なのだろう

そう考えたら好奇心とやる気が出て来る気がする

魔法もあるのかな?

などと考えていると鼻などないが“鉄の匂いを感じた”

周辺を見渡し匂いの方へ近よっていく

ソコには血溜まりに沈む女性の人間だったものがあった


「噛み傷だらけだけど食い荒らされていない?」


人を越えた存在だからなのか

死体を見ても何も感じない自分に違和感すら無く死体を観察していく


身体中に打撲痕、おそらくコレが死因かな

落下死による全身打撲?

死体周辺には所々に枝などが無数に散らばっている事も含めれば間違いない…けど


一帯は森林ばかりで崖などは見当たらない


「空から落ちてきた?」


さらに死体を観察していくと腹に強く締め付けられた痕がある


何かの魔物に捕まって落っことされた?


そう考えていた時、ふと別の事を思い出した


「…この人に変身出来ないかな」


死体ではあるが人間なのは変わらない

死体のまま変身するのか生きてる状態に変身するのか。

思考を巡らせていると


『おい、あんた』


「ヘゥ!?」


『お前、這い寄る混沌じゃないか?』


突然声をかけてきたナニかを探すが周りには誰も見当たらない


「は…はい、なりたて…ですけど」


『ははァ~なるほどな、でもそれだけじゃないな、おまえには神核が感じられない、転神者か?、いままでの反応だとソコの肉と同じか』


ソコの肉とは人を指していっているのか

だとしたら声の主は同じ存在…


「姿を見せてもらえます…か?」


そう言った直後

目の前に現れたのは異形そのもの

カタツムリのような殻の頭に昆虫の胴と腹、ヒルを彷彿させる6本の触手、そして鳥の翼


『はじめまして、転神者、ようこそ外の内壁へ。

歓迎しよう、我々の円理は“闇に蠢く知”

ミ=ゴ…と君の世界では呼ばれている』


自分の状況を一気に見抜かれた上に不明な言葉と自分の世界知ってる口ぶりに改めて神話生物は油断ならないと確信した


『ん、どうしたんだそんな気配を出して、もしかして私から何かするとでも?』


「しないんですか…」


『出来ない、のが正しい、いくらなりたてとは言え、外なる神には直接的な危害は加えられないよ、話が出来る程度だ』


なんか、スゴくいい人、色々喋ってくれるし

ミ=ゴってこんな紳士なの?


『そう言う訳でもない』


「…心を!?」


『我々は個ではないのだ、かといって全という事でもない、我々は半数なのだ』


「半…数…?」


『しかし、我々のことは知らなくてもよい事だろう、今なら何でも答えてやろう』


「な…じゃあ、さっきの円理って何ですか?」


『円理とは、真理を跨ぐ~と言う意味だ。

この場合は名だな』


「?…よくわからないです」


『理解する意味は無い』


なんだぁソレェ…どういうことぉ…?

何言ってるのかサッパリわからないィ


『理を解するはず無く明と得る必要がある』


ん~…深淵(ふかみ)ィ…


『●△◇◆‡♪♭♯*&¶■※◎♡だ』


「∇⇒○)ェ~?〓↓∥〇!╂▽デェ?」


なるほどコズミック


「では外の内壁とはなんです?」


『外の内壁とは何だ?』


ん?


『…ああ!外の内壁とは外の内壁の事か』


「ハァン????」


『まだそう聴こえるだけだ、触れれば変わるだろう』


「よくわかりませんが…わかりました。

次は、この世界の事を教えてください」


『その必要はない、ソコの肉になればわかる事だ』


その一言は、どうやらニャルラトテップの身体には待ち望んだ一言だったようで

今まで踏みとどまってた自分が途切れ

泥のように重く溶ける気分に侵され


長く暗い深淵へと、私は踏み入れたのだ

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