貝と森と湖は
違う味の空気で
「おい」
ドサッと膝にざらざらとした地面が当たった。その痛みで目を開けると、あまり見たことのない、不思議な茶色をした土が広がっていた。生えている苔のような植物も、辺りが薄暗い中、微かに光を湛えている。
俵のように担がれて走り始めてから、どのくらいたったのだろう……。
「起きているなら顔を上げろ」
ぼーっと下を向いていると、顎をむんずと掴まれて無理やり上を向かされた。首が嫌な音を立てた気がする。
ローブの彼はというと、肩で息をしながら頬を伝う汗を手で拭っている。……ということは、結構な距離を走ったのだろうか。
「……ちょっと、さっきから乱暴じゃないですか?」
私がそう言うのと同時に、彼の右肩にそっと手が置かれた。
「そうだよ、シェル」
優しい声だった。そうだ、さっき誰が発したのか分からなかった声だ。うっとうしそうに肩の手を払うローブの彼の後ろに、スラッと背の高い男性が立っていた。
暖かい薄紅色の髪の毛と、深い森のような緑色の瞳を持つ彼は、私と目が合うと柔らかく微笑んだ。その瞬間、顔がぶわっと熱くなった。
(あ、か、かか、かっこいい……!)
ローブの彼もイケメンだったけど、この人は私にとってどストライクな容姿だった。
赤くなった顔を隠したくても、両手が縛られていて出来ない。私はかっこいい彼から目線をそらすと、下を向いた。
「はあ、お前のせいでまた下を向いてしまった…」
ローブの彼がため息をついた。そして、また彼の手が私の顎を乱暴に掴む。
(ひぃ、また首がっ!)
そう思って無理やり顔をあげさせられる前に自分から上を向いた瞬間。
「こら、怖がってるじゃないか!」
「いっ…」
私は目を疑った。
かっこいい彼が、国語辞典くらいの厚さを持つ本のカドでローブの彼を小突いたのだ。意外と容赦がないのだなと思っていると、彼は本を鞄の中にしまいながら申し訳なさそうに私に微笑んだ。……やっぱりかっこいい。
「ごめんね。この人、本当に頭が固いから乱暴な方法しかとらなくて」
「あ、い、いえ、そんなっ…」
全くだ、と賛同したいところだったけど緊張して変な風に謙虚になってしまった。
「お前の顔、女だけでなく男にも好評みたいだな」
ローブの彼が頭をさすりながら、低い声で言う。相当痛かったらしい。
ていうか、私、そんな男にみえるかなあ……。
「ん? シェル、お前……この子のこと、男って…?」
そう言って、かっこいい彼は私をまじまじと観察し始めた。顎に手を当ててじっくりと……といっても5秒ほど考え込むと私の方に近づいてきた。
そして私の手を縛っていた紐を刃物で切ると、そのまま左手を引っ張って歩きだした。
「え、あ、あの」
「ちょっとごめんね、こっちに来て」
ローブの彼に向かって
「少し彼の身体に異変があるみたいだから、木の根本で休ませる。シェルは荷物を見張っていて」
と言うと、返事を聞かないで少し離れた木の影へ向かった。
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年が明けました。今年もどうぞよろしくお願いします!
本物の牛もビックリの牛歩で誠にすみません! 今年は少しペースを上げられるよう努力します。見きり発車はホントにダメだと痛感してます……
夕湖ちゃん頑張って! 私もがんばるんば。
※2019/03/29 誤字を修正しました
読んでくださり、ありがとうございます!
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