第12話 晴耕雨読
──ん、んんーっとー……ここはどこだ?
あぁ、ベッドの上かぁ。そういえば昨日あのまま寝たっけか。
手を頭の上の方に伸ばしながら目を開ける少年。
昨日のあの出来事が少年にとってはあまりにも衝撃的だったため、疲れていた体がより脱力感に襲われその場で寝てしまったのだ。
──ポタ。ポタ。ポタ。
ん?なんの音だ……って雨?!
何でこの世界に……
少年は、外から何やらポタポタという音が聞こえてきて、外を見やり初めて雨が降っていることに気がついた。
そんな少年は、起きたら雨だった。ということに驚いたのではなく、この世界にも雨があるということに驚いていた。
リーシャ達の所に行くかぁ
隣の部屋へと、左右に体を振れさせながら歩いていき、ドアを開けると──
「──ッ! ちょっ、朝から何してるのよこの変態! 」
「お兄ちゃんのエッチ……」
「──ッ! わ、わざとじゃないんだ……」
ドアを開けて、シオンが見た光景とは──
リーシャとシイナは着替えをしていて下着姿だったのだ。
シオンは目の前にいた二人の姿を見てしまい、慌てて両手で目を隠した。しかし、指の隙間から見えていたリーシャの姿を見て、口を開けたまま、そーっと手を下ろしていく。
「ちょっと、ホントに何してるのよアンタ! どこか調子が悪いんだったら言ってちょうだい。面倒見てあげるから」
「いや、調子が悪いとかそういうのではなく、リーシャの体が──」
──ッバン
「出ていって!!」
シオンに向かって、ベッドの近くに置いてあった置き時計を投げつけたリーシャは顔を真っ赤に染めていた。
──起きた場所に戻り、また仰向けになって寝る少年。
リーシャ、いつも僕の傍にいて気づかなかったけど、あんなに成長していたなんて……
僕は見ない内に変わっていた、リーシャの体に見とれていただけで、そういった気持ちは一切なかったのに……
ま、あんな状況でそんな気持ちが伝わるわけないか。
◇◇◇
「はい、お待たせ。シイナ」
「ありがとう、リーシャ」
「ん、シイナ。いつの間にリーシャをリーシャと呼ぶようになったんだい?」
「昨日の夜、ここでリーシャと話していた時にそこで……」
「ほうほうほう。そうだったのか」
シオン、シイナ、自分の分と朝食をリーシャが作り、みんなで食べ始めていた。
メニューは、普通だったら目玉焼きとかだが、この世界には目玉焼きの元となる卵を産む鶏がいない。それ故に、夕方シオンたちが木を切っている間にシイナがとってきた、キノコや葉っぱや動物なのだ。
しかし、食べてみると案外美味しいのだ。
完食したシオンは──
「ねぇリーシャ、さっきのことは本当に悪いと思っている。だから、許してくれない?」
「まぁ、あれは一方的にそっちが悪いってわけでもないし、今回は特別に許してあげる」
「ゆ、許してくれるのか? ──ありがとうリーシャー!」
「ちょ、キモいから離しなさいよねっ」
起きた時のことについて、シオンが深く反省していた。
そんなシオンを見て少し可哀想に思ったのか、リーシャは一方的にシオンが悪いというわけではないと言って許してくれたのだ。
──それじゃ、話し合いを始めるか。
三人はソファーに腰を掛け、また情報交換をしようとしていた。
シオンは昨日ぼんやりと呟いてメモしていた紙を自分の部屋から取ってきて、シイナに質問し始めた。
1.この世界に青い空は何故あるのか
うーん。これは世界が生きているっていうとを証明したかったんじゃない? もともとは精霊達がこの世界の
2.この世界を照らしているものは何か
この世界を照らしているものはね、「精霊のエネルギー」というものを集合させ太陽の様に丸くしているんだよ。
このエネルギー集合体を精霊達は「Spirit Aggregation」と呼んでいたよ。
ちなみに、地球と同じように朝昼晩もあるよ。
この世界の場合は、世界は動かなく、そのエネルギーの集合体が世界の周りを動いているの。それがこの世界の真上に来た時は昼、真下の時は夜になるね。
3.この世界のエネルギー源は何か
これに関してはそんな細かいことは言う必要はないと思うけど、この世界自体が生きているから、エネルギー源というよりは、世界の体力かな? だから世界の上で勃発する戦争は世界の体力を削っていく。
4.この世界の気候は
この世界の気候は基本的変わらないね。いつも25℃前後を保っているんだよ。でも、私たち精霊にも分からないことなんだけど、種族の柱がある周辺だけは気候が違ってくるらしいよ。
多分これはその種族にとって、生きやすい環境を作るためにそうしてるのだと考えているよ。
5.この世界はどうやって自らを維持しているのか
世界は自分を維持するために、地面に木が生えやすいなどの工夫をしたりしているよ。
あと、
6.この世界はあとどのくらいもつのか
この世界は何も変化がなければ、あとも・っ・て・数・年・だと予想されるよ。
……もって数年ねぇ
深刻な世界の状況を改めて知らされるシオンは、ため息混じりに呟いた。
──パン!パン!
「お兄ちゃん何してるの?!」
「あぁこれは、人が気合を入れる時にやることだよ。全員が全員ってわけでもないけどね」
両手で思いっきり自分の頬を叩き、気合を入れ直すシオン。
そんなシオンが、二人の少女に向かって何か言っていた。
「リーシャ、シイナ、まずいきなり攻略ってのもあれだから、1ヶ月以上くらいはここらでいろいろと準備をしていた方がいいかも」
「そうね! じやあまずはこの世界の詳しいことが載っている地図をさがしましょ! あと、晴れになったら畑とかも作りましょ!」
シオンの提案に乗り気であるリーシャ。
おそらく彼女は敵が攻めてこないとか、家があるとかそういったことで気が緩んでしまっている。
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