第11話 少年と少女

いくら植物が存在しても、動物が存在しても異世界なのだから、地球とはもちろん違う。

水や酸素などが存在しても、人がいないのなら電気もない。では、どうやってそれを作り出すのだ? そんなの決まってる。この世界を創ったがやってくれるのだ。でも彼らの実体は今は一つしかない。しかもそれは少女だという。

──そう、シイナである。

そんな少女は、必要最低限なことはすると言ったが、してくれることが異世界向きではないと思う。異世界というのはもっとこう「全て一から!」みたいな?感じなのに、チェーンソーは出してくれるわ、家を造ってくれるわ、しかも家は四階建てで地下もあるし、家具は揃いすぎてるし!

電気や水はあるわ、なに、マジ最高かよロリ、可愛すぎるわ! よし、今度一緒に寝よ! うん。キモいよ僕。

まぁそれが男の子だし!

──っはぁ疲れた。

まぁこんなのは一種のチートとでも思ってればいいか。

自分達にとって好都合なのはラッキーだしね。

……ん? やっぱ「光」のことで引っかかるなぁ。

地球だったら、太陽とかが光源だったけど、この世界はなにがあるのかな? この青い空も気になるし。

やっぱり地球は条件が合致しすぎてたんだよなぁ。まぁ、それをいったらそれはどの惑星にも当てはまってしまうからね。

地球はたまたま条件が合致しただけで、条件の合致なんてどの惑星にも有り得たんだから。

てか、こういう風に考えを広げていって、宇宙規模になると説明がつかなかったりして無限ループするんだよねぇ。




家の二階にある寝室のベッドで仰向けになり、頭の後ろで手を組みながら、ぶつぶつ独り言を呟いていた。


──こんなこと言っていても何も変わらないから、シイナに聞きたいことの整理でもするか。


ひとーつ

「この世界に青い空は何故あるのかー」


ふたーつ

「この世界を照らしているものは何かー」


みーつ

「この世界のエネルギー源は何かー」


よーつ

「この世界の気候はー」


いつーつ

「この世界はどうやって自らを維持しているのかー」


むーつ

「この世界はあとどのくらいもつのかー」


うーん。このくらいかなー。

それじゃ、メモするか。


頭の中を整理し、疑問に思ったことをメモしていく少年。

ぼーっとしすぎて、外なんか気にしていなかったがもう夜になっていた。


◇◇◇


一方リーシャはというと──


「シイナちゃん、失礼かもしれないけど一つ聞いていい?」

「何? お姉ちゃん」

「シイナちゃんって、地球でいったら何歳くらい?」

「16!」

「え?! それほんと?! 同い年なんだけど……」

「そうだけど……?」

「知ってたんだ……じゃあ、お姉ちゃんって言われるのは何か変な感じだから、私のことはリーシャって呼んでくれる?」

「分かった……でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんって呼べって言ってたよ?」

「アイツはただのロリコンなのよ。」

「ロリコン……?」


こちらは一階のソファーで話をしていた。

リーシャは、シイナが自分と同い年だということに一瞬耳を疑っていたが、シイナはリーシャが16歳ということに気づいていた。

自分と同い年の少女に「お姉ちゃん」と呼ばれるのに少し抵抗があったのか、自らをリーシャと呼んでとシイナに告げた。

シイナは最後のリーシャの言葉の意味が分からなかったのか、首を傾げていた。


シオンの居る二階へと階段を上がって歩いていく二人の少女。


◇◇◇


──クシュンッ!


その頃、シオンはくしゃみをしていた。


うーん。リーシャ達、僕のことでも話してるのかなぁ……

ん?! リーシャ「達」ってことは、シイナも僕のことを話してくれているのか?!

もしそうだったら嬉しいなぁ……

あーもう! シイナたん可愛すぎるぅ!


ベッドの上で毛布をシイナの代わりにして、それを抱きながらゴロゴロと左右に転がっていた少年。


──ピコンッ


「はい、撮影完了っと」


……え? ピ、ピコンッ?


「キッも。ベッドの上で一人で笑いながら左右に転がってるとかマジやばいんじゃないの。さ、行きましょシイナ」

「え、お兄ちゃんは──」

「えー? 誰それー? んー、もしかしてシオンって人? あぁ、その人ならさっき獣に食べられてたわよー?」


部屋のから去り行く二人の少女の背中を見た少年は──


…………ま、ままままままずい!今絶対見られてたよね?てか、あの音って絶対動画撮り終わった時の音だよね?!そうだよね?!

これはー……詰みましたね!


リーシャはシオンが笑いながらベッドの上で転げ回っているのを動画に収めていた。

シオンは撮影終了時のピコンッという音で、リーシャ達がいたということに初めて気づいた。


人生で最も見られたくない瞬間を異世界に転移してきたその日の夜に見られてしまった。

このことでシオンはさらに脱力感に襲われたのだ。


──ピッ


電気を消しベッドに入り寝ようとする少年。

彼の目には何も映っていないような感じだった。死んだ魚の様な目をしていて、この夜にも劣らないくらいの黒目だった──


◇◇◇


──ピッ


もう一つの寝室で、少女二人も寝ようとしていた。

電気が消えた後にリーシャが何か喋り出した──


「ねぇ、シイナ」

「ん?」

「書物ってあったじゃない。あれに今の私の思いを書き足すことはできるの?」

「うん。できるよ。 けど、何を書き足すの?」

「こう書き足してくれるとありがたいわ」


この世界で一番怖いのは、世界にいる6種族や他の生き物達でも何でもなく、だということを──


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