第9話 変わりゆく世界で一を創造する者
──存在しないものを創る方法
シオンがずっと気にかけていた、第6項目目だ。
──存在しないものを創ると言っても何を創るというのだ? この世界を攻略する時にそんなものは必要なのか?
他種族との友情? いや、わざわざ存在しないものを創ると言っているのだからもっと大きなものなのか……
シオンは黙ったまま一人で考えていた。
「思うことはあるけど、まず読んでみよっか」
「そうね」
リーシャに声をかけたが、少年はその直後また何かを考え始めた。
6.~存在しないものを創る方法~
おそらく、この項目を見た時に疑問に思ったことだろう。
単刀直入に言うと、全ての種族が一つになった時、この今いる場所に新たな柱が顕現する。
これはあくまで我々精霊達の予想に過ぎないのだが、この世界にいる種族を誰かが一つに纏まとめ上げ、各種族の長がそれぞれ力を出し合った時、世界の真ん中に、つまりここにもう一本の新たな柱が顕現するんだ。
この柱の転移先には多分、世界を微調整する装置が君臨していると思うのだ。この装置は我々が作ったものではない。世界が自ら生み出したものだと思う。
またその装置の周りにはもしかしたら、何者かは分からんが、かなり手強い見張りがいると思う。世界は種族を一つに纏め上げた者の力を試したいのかもな。
「なるほど……存在しないものを創る方法とはこういうことだったのか」
シオンは大事なところを読み終わり、ポツリと呟いた。
不確かな情報だが、少年の精霊達へ対する信頼故か、少年は真面目に考えていた。
そして、次の項目を読み始める。
7.~後継者へ~
英雄達よ、我々精霊やこの世界、各種族のためにもぜひ行動してもらいたい。
我々が知る限りの情報をこの書物に書いたつもりだ。
何か追加したい情報があれば、君たちのそばにいる個体へ伝えてくれ。そうすれば、君たちの思いがこの書物に書き足されることになる。
あと一応言ってくが、我々精霊達の魂の集合体がその個体と言っただろう? しかし、実は我々精霊の魂はそこら中に浮かんでいるのだ。もちろん君たちのことも見ている。
なんで我々が地球のことを知っていたと思う?
──地球のことも見ているからだよ。
「 ──っな! だから地球にある物をよく知っていたのか。」
「 ──プッ」
「プ?」
「プハハハハッ」
「笑うなリーシャ!」
「だって、あんたこの本に何回驚かせられたのよっ」
最後の最後に驚かせられたシオン。
リーシャはシオンがこの書物で何回も驚かせられたことに笑いをこらえられなくなって、甲高い声を響かせながら笑っていた。
「あーあ、なんかスッキリしたなー」
「そうね! 何か冒険って感じがしてきてこれはこれでありかも!」
「冒険ねぇ、ま、最初は本当に何もかも分からなくてそれどころじゃなかったけど、今になったらその逆だよね!」
「……お兄ちゃん達楽しそう」
「あぁ楽しいさ! こんな現実味のない世界で、転移してきた僕達にいきなり全種族を
「ホントよ、精霊も精霊で何を言い出すかと思えば──プハハハハッ! ダメ、もう耐えきれないっ!」
シオンとリーシャはこの世界に来てたった数時間しか経っていない。それにも関わらず書物を通して、この世界を変えてくれなんて言われた。そしてそれに対して笑いをこらえられずにいる。
そんな二人を目を丸くして不思議そうに眺める精霊の魂からできた少女シイナ。
「そうだね。じゃあこれが世界の始まりってことになるね。今まではずっと
「シオンの言う通り。だから私達で ──」
「1を創造するんだ!」
「1を創造するのよ!」
二人の息がぴったりと合った。
シオンとリーシャはこの世界の状態をまだ「0」と思っている。だから、少年らは「1」を創造すると言った。
これが本当の始まりだったのだ。
変わりゆく世界で一を創造する者の──
──そして、過酷な冒険の始まりでもあったのだ
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