第7話 各種族と我々精霊

シイナから差し出された書物の2項目目を読んだシオンとリーシャの間には緊張が走った。この世界の真実を知り、偽りを知り、そして隠されたもう一つの真実を知ったからだ。

この世界に二人が来て、まだ1時間と少ししか経ってないというのに、となれば、当然それなりのプレッシャーもかかるわけだ。


そんな緊張感をもちながら二人は3項目目を読み始めた。


3.~世界の種族~


前の項目で書いていた通り、この世界には君たちの他に生物がいて、それらは6種族に分かれている。


1.──森霊族エルフ 【Elf】

2.──地精族ドワーフ 【Dwarf】

3.──悪魔族デーモン 【Daemon】

4.──天使族エンジェル 【Angel】

5.──巨人族ジャイアント 【Giant】

6.──吸血鬼族ヴァンパイア【Vampire】


まず、君たちが今いる場所は、ちょうど世界の真ん中だ。

そして、森霊族エルフは中心から見た時に、北西の端の方にいる。

あ、端にいると言ったが、実際はそこにだけだ。

森霊族は森を好み、耳が尖っていて長命だ。

まぁ、この情報は知ってると思うからいいけど、次が重要だ。

奴らは一般的な解釈でいくと、体力的に弱く金属を嫌うとされている。しかし、本当はその逆で、弓や剣を使うことがある。

そして一番重要なのが、奴らは賢く魔法の扱いに長けているということだ。


次に地精族ドワーフ


奴らの柱はここから見て、丁度西に位置する。

外見の特徴は、筋肉質で成人の男女に髭が生えている。そして、君たち人間から見ても背が低く、およそ1mあたりといったところだろう。

しかし、背が低いからと言って馬鹿にできない。

技術力が凄く、機械類の扱いに長けている。

普段は、自らの住処で鉱脈などを掘っているのだが、実はこの世界にも奴らの鉱脈が広がっている。

だから、地下にも注意しないといけないんだ。


次に悪魔族デーモン


奴らの柱はここから見て南西に位置する。

奴らは霊とは違って、しっかりとした知能がある。それ故か、相手をいたぶることが好きだ。

エネルギーの摂取は、虫でも、動物でもどんな生物からでも行える。

奴らの少し怖いところは、「集団行動」をすること「独自の異空間」を持つとされているということだ。

あと念のために言っておくが、奴らには「悪魔との契約」というものが存在する。

何者かが、一人の時に自分の願いを様に言ったら、その願いを叶えるため、担当の悪魔がやってくる。そして、その願いを叶えさせてくれるのだ。

なんか良いことだと思うだろう?しかし、霊障をあしらってしまうのだ。霊障とは、例えば、「良縁に恵まれない」や「重い病気にかかる」といったものだ。

一人の時に願いを口にするのは避けた方がいい。しかも悪魔がやってきたらその願いは必ず叶えられるのだ。

ホントめんどくさいよな。


天使族エンジェル


奴らの柱はここから見て南東に位置する。

天使族の説明は少し長くなるかもしれないが、その分重要ということもあるからしっかりと読んでくれ。

奴らには他の種族と違ってが存在する。その数は全部で8つだ。


1位.【熾天使】


熾天使は天使の中でも最上位で、単数形では「セラフ」、複数形では「セラフィム」と呼ばれている。体が炎に覆われている。それ故に「燃える天使」と呼ばれている。

6枚の翼を持っている。


2位.【智天使】


智天使は2位で、「ケルビム」とよばれている。

空を高速で飛ぶことができ、4枚の翼を持っている。そして、最大の特徴は顔が4つあることだ。君たちがもといた世界の智天使の顔は、人間、牛、ライオン、鷲だったと思うが、この世界にいる智天使はどれも熾天使の顔を持っている。この意味は分からんがな。


3位.【座天使】


座天使は3位で、「ソロネ」や「スローンズ」とよばれている。炎を纏った車輪の姿をしているといわれている。その理由は奴らの役目にある。奴らは神の玉座を運ぶ役割がある。ちなみに、ラファエルはこの指揮官だ。


4位.【主天使】


主天使は4位で、「ドミニオンズ」や「キュリオテテス」ともよばれる。中級天使でその名前には、支配するという意味がある。また、神の威厳を知らしめるという役割がある。

この中で「ザドキエル」という「慈悲の天使」が一番有名だろう。


5位.【力天使】


力天使は5位で、「デュナミス」ともいう。

「奇跡」を司る天使だ。例えば、君たちがこれから世界を変えていくとしよう。その時、君たちはデュナミスから見て「英雄」であるだろう。デュナミスはその「英雄」となるものに自らの力を使い勇気を授けるとされている。


6位.【能天使】


能天使は6位で、「エクスシア」ともいう。

能天使は、神の掟を実行する天使である。

ここにいる生物達(君たちも含めて)より、4段階高次の霊的な意識を持っていて、天地創造に関わった天使でもある。


7位.【権天使】


権天使は7位で、「アルヒャイ」や「プリンシパリティ」ともいう。そして、これより下の天使が「下位天使」になる。


8位.【大天使】


大天使は8位で、神と生物の間に立つ「連絡係」だ。

これより下は、一般的な天使だ。


ここで知識を加えておこう。

ガブリエルやミカエルは最高位の天使とされているが、天使階級では実は8位の大天使に入っている。この理由は、大天使が天使階級の最高位と考えられていた時の名残りなんだ。


そして巨人族ジャイアント


奴らの柱はここから見て東に位置する。

奴らに関してはそこまで深く説明するつもりはないから、おおよそのことを言う。

奴らは、とにかくデカい。身の回りにあるもの含めてだ。

奴らの中でも強い奴は、巨人族の中で、神的な存在とされている。それ故にそいつらは、「巨神」とされている。

攻撃しない限りは、特に目をつけられないから安心していいと思う。「巨神」は違うがな。


最後に吸血鬼族ヴァンパイア


奴らの柱はここから見て北に位置する。

奴らもこれといって説明するものはないが、念の為言っておく。

奴らは、鏡に映らない。水面、透明なもの、そういったものにもだ。いつもは棺桶で寝ているらしい。

こんなの常識といってもいい程だが、弱点は「強い光」と銀の武器だ。そしてなんとも貧弱なのが、川など流れる水の上を渡ることができないというところだ。

それと、君たちの世界のヴァンパイアは人間の血を吸うとされているが、この世界では全生物の血を吸うんだ。


以上でこの世界の種族の説明を終わるよ。


少し重い雰囲気を和らげるために、私が君たちが今考えていることを当てて、驚かせてあげるよ。


今君たちはこんなことを思っているだろう。

天使族がいるのは分かったが、

どうだ当たったか?


「──ッ!」

「──ッ!」


考えていることを見抜かれ、驚くシオンとリーシャ。

その時、シオンの顔に僅かながら笑みが浮かび上がっていた。見たこともない新技術や追い求めていた光景を目にした時の様だ。


では、説明するよ。

神とはである。

我々精霊は忽然と何も無い空間に現れたのだ。

そこに関しては説明のしようがないから、ここでは何も言わないがな。そして、我々は君たちと同じように成長を遂げ、考えることができるようになり、その時我々は他に場所が欲しいと思った。

そしたらこの世界ができていた。その時はまだ、世界は再生リセットする能力もなく、ただただ土地にすぎなかったのだ。

ある日、我々精霊達は君たち人類をも超える技術を身につけたのだ。その技術によって、未来の世界を予想したんだ。その結果は、だったのだ。

急すぎやしないか? 君たちもそう思うだろう?

我々は世界が爆破する前に何かできないかと考えた。

しかし、我々が出した最善策は──


「世界が爆破したと同時に起動する装置を作る。その装置は爆破に巻き込まれないように、別空間に設置する。起動直後、世界が再構築され意志を持つ世界が生まれる。そしてその後の世界でこの装置は、我々の魂を身体からだのもとにした個体を創る機能を持つ。」


「え、装置を別空間に設置できるなら、精霊達も別空間に行けば……」


シオンは疑問に思ったことを口にしていた。しかし、次の文章を読んで理解した。


我々は装置を別空間に設置できるが、別空間に我々精霊自体は移動することができないんだ。

君たちがこの世界の真ん中に来た時に、オートシステムが起動しただろ?あれがその装置なんだ。

そして、ある個体が生まれる時に、無数の丸い光の粒が見えたと思う。

──それが我々精霊の魂なんだ。

では、どうやって書物を遺せたのだろうと疑問に思ったところだろう。

我々精霊の魂は魂である故に、実際に物に触ったり、書いたりすることはできない。しかし、考えただけで実行できる団体であることを忘れずに。魂といえど、そこに我々はいるのだから、多少のことは実行できる。

だから、書物を遺し、それにどんな内容を書くということをその装置にプログラムしたんだ。また、明らかになっていった情報を書き足していっている。

ここでまた新たな疑問が生まれたところだろう。

「時間がリセットされれば、書き足すということはできないんじゃないの?」と。

我々は魂であるが故、リセットの対象にならない。装置もな。もう一つ上の次元に存在するのだ。


ここまで長々と書いてしまったが、肝心の天使達の神についてまだ我々精霊であるということにしか触れていなかったな。


天使達はこの世界が再構築された時に生まれた。これは他の種族も同じだけどな。

天使達は何故か知らんが、我々精霊が今は魂だということに気づいている。それに我々がこの世界を創ったこともな。

ということで我々を神としている。具体的に言うと、我々の魂が身体のもとになった個体、君たちの目の前にいるものだ。


「なぁリーシャ」

「どーしたの? シオン」

「僕、分かってしまったんだ。この世界は精霊達と協力しないと絶対に攻略できないって──」

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