第17話
おやすみのキスより
おはようのキスが好き
1日の始まりに彼が側にいるってことを感じられるから
「おはよう」
「んっ、おはよ」
「拓也くん、まだ寝ててもいいよ、キャッ」
「もう、ちょっとここでいてよ」
後ろから抱きしめられ、寝起きの掠れた声でそんなこと言われたら、どこにも行きたくなくなるじゃない
「でも、お仕事行かないと」
「今日は休んだら?」
クルリと向きを変えられて、上から見下ろされ、いたずらっこのように笑ってる
「ダメよ。私も稼がないと拓也くんに甘えてばっかりじゃ」
「そんなこと気にしてたの?」
「そりゃあ、気にするよ。
お給料、入ったらちゃんと払うからね」
「いいって」
「良くない」
「いいんだって」
「良くないから、早くどいてよー」
「おっしゃ、俺から逃れられたら行っていいよ」
子供みたいにはしゃいでプロレス技で体を固められた
「拓也くんー、もういい加減にして」
ちょうど手の辺りにあった彼の大事なところをぎゅっと握ってやった
「うわぁっ」
力が抜けた隙にベッドから出た
「お前、ずるいぞー」
「ふーん、私の勝ち」
腰に手を当ててドヤ顔して見せた私の前にずかずかと歩いてきて、両手で頬っぺたを挟まれた
「どうかなぁ」
そう言うと唇を塞がれた
腰をがっちりと支えられ、舌を絡ませ、角度を変えながら続けられる彼のキスに全身の力が抜けてくる
「やっぱ、俺の勝ち!」
「もっ」
「いいよ、行ってこい。遅くなんなよ。
続きは夜な」
もうー、その笑顔が更に行きたくなくなるんだよー。
はぁ、でも、行かなきゃ
「んっ、いってきます」
出掛ける準備をして、そーっと部屋を覗くとうつ伏せになって眠る彼の姿
いつもと違うボサボサの髪を指でといて、頬にキスするとむにゃむにゃと呟いて寝返りをうった
拓也くんは年が明け更に忙しくなり…。
live、映画、取材…瞬く間に駆け上がっていく彼を見てると、どうしようもない淋しさに心の奥が締め付けられる思いになった
でも、そんな思いを彼はいつもしっかりと、埋めてくれた
いつも、あっためてくれた
だから、私は今日も大好きな彼に
"いってきます”のキスをして頑張れる
まだ、顔を見て言えないけど…
ほんとは、何度も言ってるんだよ
大好きだよ。『拓也』ってね
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