第5話

明くる朝、俺は早くに目が覚めた

この、でっけぇ朝日を見るのも最後かぁ



しばらくして、お祖母ちゃん達は畑から帰ってきたけど、千夏ちゃんは起きてこない


「あの…千夏ちゃんは?」


「それが、さっき、見に行ったら、熱が高くて。拓也くん、帰る日なのにねぇ。ご挨拶出来るかしら」


「熱があるんですか?

あの……すいませんでした。千夏ちゃん、昨日から具合悪かったのかもしれませんね。俺、それに気付かず、この辺りを案内してとかお願いしてしまって」


「そうなの?でも、気にしないでぇ。

あの子、小さい頃から急に熱を出すのよ。

ほんとは身体、辛いんだろうけど、ギリギリまでそんな素振りを見せないで周りに心配かけないようにするのよ。そういうところあるの。

親の私でも気付かないことが多いんだから、拓也くんがわからないのも無理ないわ。

さっ、遅れるよ。支度して」


「でも……」


「あの子にはちゃんと言っておくから」


「千夏ちゃん、眠ってますか?

俺…様子見てきてもいいですか?」


「いいわよ。それじゃあ、ちょっと見てきてもらえるかな」


「はい」



部屋のドアを静かに開けて

中に入ると苦しそうに息をする彼女の姿があった


小さな声で彼女に向かって話しかけた


「ごめんなぁ、俺…わかんなくて」


俺の声は届いていないようで、目を瞑ったまま、返事はなかった


熱い額にそっと手をあてると

うっすらと目を開け、俺の名前を微かな声で呼んだ


「たく…や…くん?」


「あー、俺だよ。もう、帰らなくちゃいけないんだ。いろいろ、ありがとうな」


苦しいくせに微笑んで、首を縦に振った




たった、1週間だったけど、

俺は千夏ちゃんの自然に心にしみるような優しさに癒された


額に触れた手から彼女の体温が消えていくのが名残惜しくて、なかなか動かせずにいた


安心したように再び眠りについた彼女がゆっくり休めるようにと、仕方なく手を離し、

その代わりに気付かれないように短く触れるだけのキスをした


ありがとう。

早く元気になれよ

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