第4話

拓也くんがうちに来て1週間が過ぎた


テレビから感じてた印象より、ずっと子供っぽくて、よく笑った

でも、ふとした時に見せる切ない表情にドキッとしたりもして。



「お祖母ちゃん、俺、もう明日には帰らないといけないんです」


「そうかぁ、淋しいねぇ」


「俺も淋しいです」


「また、いつでもおいで。いつでもね」


「はい、また来ます!」


「じゃあ、今晩はお別れパーティだね」


「いや、そんなの、いらないですよ」


「遠慮はいらないよ。博はとりあえず、飲めりゃ喜ぶんだから」



食べきれないほどのご馳走に優しい家族

こんなにも、あったかい場所にたどり着くなんて、思ってもみなかった




「あーあ、お父さん、また、こんなところで寝ちゃったよー」


「千夏、いいよ。お父さんいっぺん寝ると起きないよ。夏だし、そのままで大丈夫でしょ。

ふぁ~、お義母さんも寝たし、私も眠くなってきちゃた、後はよろしくねー」


「もう、何なのよ」



「千夏ちゃん、俺、手伝うよ」


「いいよ。拓也くん、明日早いんでしょ?もう、休んで」


「いや、やるよ」


拓也くんと二人きりになると何話していいかわかんないだから…



散らかったリビングを片付け出すと、彼の方から話始めてくれた


「…1週間、あっという間だったなぁ」


「そうだねぇ」


「ねぇ、もう夜だし、出歩いても平気そう。この辺り案内してよ!」


「案内て言っても…」


「何処でもいいからさ」


「わかった」



街灯も疎らな田舎道を歩く


「うーん、何処行こうかなぁ。

あっ、そうだ!私のお気に入りの場所があるんだ。夜は行ったことなないんだけどね」


「おっ、いいね、行こ」



裏山の神社へ向かった

隣を歩く拓也くんに何か話さなくちゃ、と次の話題を思案中の私の気持ちを察してくれたのか…

長い石段を上り始めると、いきなり拓也くんが嬉しそうに叫んだ


「千夏ちゃん、ダッシュ!!」


「え、ちょっと、拓也くん、待って」


「だっせえなぁ」


「はっはっ、私だって高校の時はこれぐらい一気に上ったんだから」


「はいっ、手」


「い、いいよ」


「素直じゃないなぁ」


グイっと引っ張ってくれた大きな手

魔法にでもかかったように足が軽くなった


やっぱり…拓也くんは星から来た人かな


「フフフ」


「何だよ?どうして笑ってんの?

千夏ちゃん、思い出し笑いすんのって、どすけべって知ってたぁ」


「もっ、そんなことないよ」


「クスクス、ほら、着いたよ」


「うわぁー、すごーい。夜に来たのって初めてなの。こんなに綺麗だったんだぁ」


「何か俺が連れてきたみたいじゃん」


「ほんとだね、ごめんなさい」


「いや、いいけどさ。ほんと綺麗だなぁ」




「子供の頃、辛いことがあると、いつもここまで上ってきて、この景色を眺めてた。

…っでね、帰り、石段を下りていくと、重たかった気持ちが1段1段軽くなっていくようなそんな気がしたの。

ここは私の大切な場所なの」


「拓也くん?」



彼は黙って、小さな町の明かりを眺めてた。

その瞳が少し潤んでいるかのように見えたけど、

きっと、それは、月の灯りが写っているだけ…。


まだ、繋いだままになった左手から伝わる彼の脈動がどこか切なく感じ…

言葉をかけるかわりに指先に少し力をこめた











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