鬼ン婆と鬼ン爺
ハツはとっさに言いました。
「あのう、すいません、勝手して、ゆるしてください」
「ふん。そがン言うほど悪かことバしよったっか」
うねった毛のしたから、するどい目がにらみます。どうしていいか分からないでいるうちに、お
おおきな
そこの草むらで休んでいたらしい
「
「おらンとかい。爺や、爺」
ハツはそのあいだ、何度もあやまったり、手をほどこうとしましたが、びくともしませんでした。そのかわり、
小屋のまえまできたところで、ようやく戸が引かれて、なんとまあ、お
ちがうところといえば、お爺の笑っている顔でしょうが、とてもとても、にたにたとして気味の悪いものでした。
「ほオ。こりゃ
「そうじゃろう。どっから入ったもンじゃろか、どがンしようか」
「
お爺がうれしそうに言ったので、ハツは、ぎょっとしました。
「こがン
「そンなら、
頭のうえでのやり取りに、目まいまでする思いです。もし、懐の蛙が、ハツのうすい
「ともかく、爺や。ちっと見とってくれンかい。おら
お婆はそう言って、
「ほんなこつ、珍しか。どっから入ったもンじゃろ」
両の
お爺の曲がった顔が近づくたびに、むっと変なにおいがしましたが、ハツは口をむすんで、がまんしていました。やがて、
「やっぱり食われンな。もっと肥えなア」
「われア、喉ン乾いとらンか。向こうのかめにある水ウ、飲ませてやろか」
こう聞いてきました。
そこでハツの口が開くよりもさきに、懐が返事をぶっつけました。
イエ けっこう
くされた かめ水
くさべの
ずっとまし ずっとまし
これを聞いたお爺は、笑い顔と、怒り顔がごちゃごちゃになった
「こン
あっという間にハツを外へほうりだしてしまいました。
草のうえを二回も
それが早いか、そら豆くらいの頭をふりふり、ころころ
「ああ、目が回った。あの
「ほんとですねえ」
「いや
「まあ、この子は」
さらに高い声を出した蛙が、草をわけて
「ばかだねえ。
丸い目が、泣きだしそうなハツの顔を見あげています。
「あんなの、おそろしいものねえ。だれだって、おそろしいときは泣くものだよ。けがだってしたんだろう」
言いながら、はじめと同じように、ひとつ
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