霜の童女たち
風は
はじめ童女は、ひとりでないことを
あかりを
あまりにのんきに流れていくので、童女は胸のあたりがじれるような気がしてきました。
「わたし、今夜はたいせつなお仕事があるんです。夜が明けるまでに、間に合うでしょうか」
「さあね。あなた仕事って、そんなにちいさなからだで、なにをなさるの」
「もちろん、
このときばかりは、童女は
「わたしたちがふる、土をおしあげる。わたしたちが
それは何度も姉さんたちに
「ふん。たいそうなものね、わたしにはわからないわねえ。そうだわ、あなたも、このまま風になりなさいよ。なにも
「いえ、いえ。そういうわけにはいきません」
童女がはっきり告げると、風はむすっとして、それきり口をきかなくなりました。
やがて、東がたを回ったときです。したの田んぼに姉さんたちがいるのがわかりました。かすかな銀のすがたが、ひかっています。
けれどもあまりに
「風さん、もう少し、向こうへおりられませんか」
「それは
風がそのまま通りすぎようとするので、童女は胸がじんじんしました。頭はなんだか、くらくらしました。
「それなら、それなら、さようなら」
やっとのことでそれだけ言うと、ちいさな足が風のきわを
風は、あっと
ちいさな、ちいさな童女は、こんどは目をそらさずに、真っすぐ田んぼへとおりていきました。姉さんたちがそれを見つけて、みんなで寄りそいあい、
「まあ、おかえりなさい」
「おかえりなさい。どこへ行っていたの」
「よかったわ。わたしたち、
「えらかったわね。よくきたわね」
姉さんたちは、ひとりで
幼い童女はやっと安心して、霜のものであることを、やっぱり
「さあ、あなたもはじめてのお仕事をしなくちゃあ」
見ると、もう田んぼのあちこちで、
姉さんたちが、くるりくるりと
そこから氷の青をした、あらゆるものが生まれてくるのです。
「春のしたくをしましょうよ。とびきりのいのちを育てましょうよ」
いくすじもの霜の柱は、月夜にかがやく
あるものは歌ごえから
やがて、じぶん自身も
田畑が
すべりおりてきた
「道よし、向きよし、明るさよし、」
晴ればれとした声は、いちばんに、もやにかわった童女です。
「さあ、
あの幼いものは、まだ目をつむって、夢のような仕事のうちの、
よりそう姉さんの胸のなかで、ちいさな
(おしまい)
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