稲の切り房の話(二)
風のみちから
いま、東の空では
風がひとすじ吹きおりるたびに、
「仕事がはじまるね」
「山の村へといくんだね」
はだかの木々は身を
月から吹く風のみちは
「道よし、向きよし、
「さあ、いきましょうよ」
ちらりら、りん。
さらりら、りん。
見おくりの星が
そのなかに今夜はじめて村へとおりるものがありました。秋のおしまいに生まれた、いちばん
いままでは、地上のようすや、その旅のみちのことを姉さんたちから聞かされるばかりでしたが、今夜ようやく、霜のものとしての仕事をまかされることになったのです。
「こんばんは、こんばんは、お星さま」
星たちの
童女はうっとりとしながら、けれども、あんまりよそ見をしすぎてしまったようです。
ひゅるり、ひゅるり、ひゅるうり。
「あ、いやだ。こっちじゃないわ、姉さん、ねえさん」
気がついたときにはもう
姉さんたちのすがたは
ただ、ときどき
やがて、その足が地面につきました。外れみちの風はなんにも言わず、いっそう
童女のからだは、こころ細さから、もう氷のつぶよりもちぢんでしまっていました。
けれどもしかたがありません。どうにか起きて、やっと顔をあげました。姉さんたちならこう言うでしょうから。
「まあ、しゃんとして、顔をおあげなさい。あなたも霜のものなのですよ」……
あたりの土はかたくて冷たくて、ぱっつりした
さっきまでの楽しげな鈴の音や、笑いごえはどこにもありません。遠くでしている川水の音は、むしろさみしいものでした。
それでやっぱり、童女はとほうにくれるのでした。
「どうしよう。わたし、こんなところにひとりぼっちで。姉さん、ねえさん。ほんとうに、どうしたらいいの」
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