償いばなし
「みっともないところをお見せしました。どうしても
――なんでも、話しやすいところから、話しやすいふうに言ってくれて
こんなとき、
すかさず間を
「じゃ、ね、いいですか。もう話してしまいますよ。
もう
「
あたしら、し
男が言うのには、この稲荷神さまというのが、狐の世で一番
「いろいろやりました。
先生が顔色を変えましたので、男はまた、うるっとしました。
「あたしら悪い心だったんです、いけなかったんです。稲荷神さまでさえ、尾の先も
稲荷神さまは山なかの
恐ろしいお言葉です。ああ、思い出すだけでも……。
それから、あたしらのあいだには、ぱったりと子が生まれなくなりました。そればかりか、この山に生きるものはすっかり、狐のことを忘れてしまったんです。いいことも、悪いことも。あたしらがいたってことは、なにもかもです」
風吹きでしょう。黒いかげが、ざわざわ
「それでです。一族なんとかお
いままで悪さをした数に比べれば、十なんて大したことではございません。そう思って、さっそく人助けというのを始めたんです。ところがどうしたことか、そのころには人間っ子ひとり道を通らぬありさま。村に出れば、あやしい
……いいことをするなんてのは、真実、本当に
最後に、ひと息ついて
「結局、あなたさまが十人目でいらっしゃるわけなのです」
がたり。ふたたび戸が揺れました。これはどうにも風などではありません。男も先生も顔を見あわせて、
はたして、そこでは二人男が
「やめなさい、みっともない」
一番手の男が、自分の鼻をかみながら
「
――そういうことなら、私も変なことを言って悪かったですね。ですが、いいんですか。話してしまっては数になるかどうか。
気づかわしげな先生の言葉に、男は気の抜けた笑い顔です。
「この
――いや、それには及びません。
下げられようとした
――私は冷や飯も好きですから。ただし、あなたがた、お
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