キツネノチャブクロの話
緑の山
(これは、わたくしの親しい先生がお聞かせくださった話です。
といっても、
その夏はことさら暑く、
涼しくも悪い道が続くところを、
「そんならですね、先生お
「ええ。村の皆さまにもよろしく」
下がり
ここまでの礼にと、茶屋の団子を持たせて見送ったのち、先生も
――私は今夜には、駅の
ときおり吹く
さて、そうしていくら待ったことでしょう。馬車は一向に
日はまだ高く見え、なにぶんのどかな場所でしたから、そう
二週間のうちには、村のものに連れられて山に入ったこともありますし、先生には自然とこの辺り
目新しいものを探して小屋の周りを二周、三周とします。はじめのうちはその
まだ、馬車はくる気配を見せません。そこでまあ、わたくしの知る先生のことです。次第に
ふと、そのかげが見えなくなったのは、しばらく経ったのちでした。どれだけ見回しても、のぼりの臙脂、屋根の
――どこをどうきたかしらん。
汗を
先生は普段から歩く道で物思いにふけったり、得意になったりしなさるのですが、このときばかりは道なき道がいかにも冷たく思われたようです。
夏の
着物がじっとりと
そこへ後ろからこんな声が聞こえてくれば、いよいよ
「もうにおわない」「こっちだこっち」「おいおまえ」
とっさに
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