クズの聖戦(旧稿版)

坂口航

プロローグ

 智に働けば角が立つ。

 情に棹させば流される。

 意地を通せば窮屈だ。


 中学の頃にあった教科書で夏目漱石の紹介文でこのような言葉が載っていた。

 俺はこの言葉に大いに賛成するが、同時に、漱石の時代からまったく進歩してないのかと思わずにはいられない。


 だが、たとえ変わってなくとも世の中というものはなぜか正常に回っているのだ。

 なら、今、俺がここでどう喚こうと世界は正常に回るのだろう。


 君達は次の世界を変えて支えるものだと言われても、そもそも世の中が変わることを嫌ってる。新しい人材が活躍できる制度もほとんどなく。新人か何か言えば戯れ言だと蔑まれ、むしろ潰されるのは間違いない。


 そういう会社ばかりじゃないと言われても、そういう会社がほとんどだから仕方がない。


 では、そんな中で俺はどう生きるか。


 そんなものはもう決まっている。

 ただ、意味もなく歩を進めるだけだ。

 なにを望むでもなく、なにを壊すでもなく、ただぼんやりと歩いて行くだけだろう。


 もし、俺がなにかを望み、なにかを壊そうとするような目標を手入れたらどうなるか……


 そんなものは知らない。そうなったらその時の自分に任せるだけだ。


 俺の人生とはなにか、そんなものは簡単だ。



 体たらくで、べらぼーな、諦めに満ちた愚者の道だ。

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