セントラルエリア

イザナミ様のワープゲートを抜けると、そこはしっかりと神の国だった。

セントラルエリアの王城前に俺たちは立ち、門の前でその城の大きさに圧倒される。


「いや……何回来てもやっぱでかいよな……」

「そう、だね……お城って言ってもこう……ね?毎回思うけど規模が違う……」

「なァ、輝ってこの城に誰と住んでんだ?」

「確か、大臣と執事長、その他2人の執事、メイド長、その他5人のメイドだったと思う」

「ほーん、スッゲェ……」


早速俺たちは、門を潜り中へと入っていった。門番とはもう全員顔見知りなので顔パスだ。


場内へ入ると、執事長のガロンさんが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ、お久しぶりでございます」


嗄れた、それでいて優しい声音でニコリと微笑み会釈をしてくれる。俺達もそれに続き会釈する。

柔和な微笑みと、口元に蓄えられた白髭が優しいおじいさん感を増している。


「お久しぶりです。輝……っと、ブライト王子は今大丈夫でしょうか?」

「ええ、ブライト様は今、自室にて課題をされているみたいですよ」

「え、終わってないなんて珍しい」

「実は、初めの2日間熱を出されておりまして……。課題もままならぬ状況でしたので」

「なるほど。今は平気なんですか?」

「ええ、それはそれは元気でいらっしゃいますよ」

「よかったです。じゃあ、王子の所まで失礼しますね」


俺たちはガロンさんにまた会釈し、輝の自室へ進んだ。

部屋の扉は普通のドアで、王子の部屋にしてはかなり質素な扉だ。それでも、上質な装飾が施されている。

ノックすると、中から男子にしては高い、春歌のふわふわした声とはまた違う声が返ってくる。


「はぁーい?なにー?だれ?」

「俺〜。スキアとスカイと春歌と涼清」

「なぁに多いじゃーん?先に言ってよね〜」

「ごーめん。連絡すんの忘れてたわー」

「いいよー入って、鍵開いてるから」

「ん、おじゃましまーす」


俺はそう言って部屋の扉を開けた。中は白と灰色と黒で統一されたシンプルな部屋で、それでも、一人部屋にしては広い間取りの部屋だ。

壁に埋め込まれた大きな水槽の中には沢山の熱帯魚が泳いでいる。


「いつ見てもすげー部屋……」

「ボクの部屋よりも真の部屋の方がすごいって。きんきらだもん」

「それはまぁ、たしかに」

「んで?なんの用事?ボク課題終わってないんだけど」

「んなもんすぐ終わるだろ。ベッド座っていい?」

「いいよ」


ふかふかのベッドに4人で座り、机に向かう輝に説明する。

銀色の髪を後ろで細く結った上品な見た目のその表情は、とても面倒くさそうな顔だ。


「へーぇ、モノクローズハウス……。それが?真宵さんが言ってたの?」

「そ。ほらこの地図。ここに向かいたいんだ」

「いいと思うよ。いつ行くの?」

「なるべく早めがいい。社長に話をしてからだから、明後日以降かな」

「把握〜。じゃ、それまでにしておくことはある?」

「あぁ〜……なんかあったか?」

「おゥ、あるぜ。なァ輝、お前時間遡れたよな?」

「え?うん。遡れるけど。なに?過去見たいわけ?」


涼清も、さっき言っていた時間軸の話を説明する。全て同じ時間、犯人の顔はよく覚えていない。どこにいたかもよく分かっていない状況にある現状で、確認するためには時間を遡りたい。


「ふぅん……。いいよ。じゃ、真にもそれ説明しちゃおっか。真とこの後遊ぶ予定だったし丁度いいや。光と港連れてきてよ」

「話が早くて助かる。俺が2人のこと迎えに行ってくるから、お前たちはここに居てくれ」

「「「はーい」」」


俺はそう言い残し、一度神の国から地上へ戻ることにした。

京都にいる二人の家を訪ねて、事情を二人にも説明し神の国へ戻る。


また輝の部屋に戻り、八人がそろった状態で話を進めることにした。

真に状況を説明すると、少し混乱したように言う。


「えっと、モノクローズハウスに行くのは明後日以降?んで、時間遡るのは?」

「今日らしいよ。するのはボクなんだけどね。あれ結構疲れるんだよ?」

「頼むよ、輝」

「はいはい」


輝にそう頼み、まずは時間軸の話の整理をする。


「まず、気づいたのは涼清だ。涼清の家が被害にあった時間帯が14時。11月22日の14時だ。イギリスにいた俺たちはそのマイナス9時間、11月21日の23時。日本とイギリスの時差はマイナス9時間だから同じ時間帯だ。そして春歌も11月22日の14時。ほかは?」

「んと。俺んちが事故にあったのも14時ころだったと思う。正確な時間は覚えてないけどな」

「おとぉが暴れだしたんは……お昼頃やな、せやけど……正確なんはわからんな」

「父上も、真の父上も襲われた時間は一緒だったよね?」

「うん、輝の父上とオレの父上が襲われたのは式典の準備途中で、式典が15時からだったはずだから……」


同じ時間帯で行われていたことはこれで分かった。あとは実際に見るだけだ。


「輝、8人お願いできるか?」

「いいよ。……でも、本人はタイムリープには参加させない。いいでしょ?」

「……分かった。ただ頼みがある。だれか、気になることがあればメモしてきてくれ。光の……岩の文様とか!」

「わかった。スキア達のところもしっかり見てくるから、安心して。じゃあいくよ、誰から行く?」


8人はそれぞれで悩む。


「涼清が見つけたんだし、まずは涼清でいいんじゃないか?」

「それもそうだね。ボク涼清の事故のことはまだよく知らないし……そうしよっか」


涼清は承諾し、残り7人は輝の周りに固まる。


「遡るよ。日付は11月22日の13時00分。炎水 涼清の自宅」


輝が時間指定し、力を発動する。

輝の足元には時計の文字盤のような魔法陣が浮かび上がり、7人を包み込む。




「行ってらっしゃい」



涼清の声と共に、俺たちは時間を遡った。

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