時間帯
俺たち双子は、港の家を昼頃出て京都に着いたという
光の家を過ぎて、隣の屋敷。
屋敷の門の両脇に、灯篭が立っている。その火は触れても熱くない。鬼火だ。
「こんにちは鬼火さん」
「あ?おーおー天使の坊ちゃんか!主か?」
「うん、いる?」
「居るぜ、上がんな」
「ありがとう、お邪魔します」
スカイがそう言葉を交わして、門の中に俺と一緒に入っていく。
お抱えの庭師が、定期的に手入れをしている庭を眺めながら玄関に着くと、涼清が立って待っていた。
「よぉ、わりぃな遅れて」
「んーん、突然来たのは僕達だから」
「そーそ。仕事お疲れさん」
「さんきゅ」
短く言葉を交わして涼清に着いていく。
涼清の自室に通されて、俺達は腰を落ち着ける。
涼清の部屋は純和室で、昼の今の時間帯は普通に日が差して気持ちのいい開放感ある部屋だが、夜になるとあえて薄暗くして、オレンジの灯篭型の間接照明を付けてほんのりオレンジの部屋になる。
俺は昼のこの部屋より、夜のこの部屋の方が好きだ。
「ちょっと待ってろよ、お茶もってくっから」
「おう、ありがと」
暫くして、緑茶のいい匂いとともに涼清が戻ってくる。
「っし……んーで?話って何?」
「あぁ、実はな……」
俺は事のあらましと今後の予定を涼清に話す。
涼清はそれを静かに聞き、うんうん、とうなづいた。
「おけ、分かった。俺は春ンこと乗せてくわ」
「ありがと!」
「そこに行けば何かわかンだろ?なら行くしかねぇよ」
快く受け入れてくれた涼清は、そのあと茶菓子を食べながら雑談をした。
涼清の家に一泊して、次の日の朝に春歌の家に行くことにした。
「そういや、お前ら家の方はいいのか?」
「ああ、叔父さんが任せとけって言ってたから大丈夫。……もともと、僕らの家なわけでは無いし」
「……、まぁ、そうだな」
少し申し訳なさを残しながらも、その場は受け流した。
本当の家族のように過ごしていても、所詮は親戚。俺たちの意識の中に、まだ実の両親と兄、姉は生きている。
.......顔は覚えていない、でも、また一緒に暮らしたいと、本当の家族と過ごしたいと、常に願っている。
そのための計画であり、準備である現段階でやっと兆しが見えてきた。達成しなきゃいけない、それは俺のためだけじゃない。ShowTime!全員に関わる事だ。
「.......顔は、思い出せないけど。でも、俺は、今の親が本当の親だと言われても、納得はできない。まだ生きてるんだ、.......死んでなんかないんだから」
死んでなんかないんだ。
確認できる訳でもない、居場所を知ってる訳でもない、そう願っているだけだが。たとえ死んでしまっていたとしても、意地でも遺体を探し出す。絶対、迎えに行くんだ。
どうして家族のうちでも俺たちを境にして下は残ったのか。その理由はわからない。でも残ったからには救おうと誓った、この手で、この目で、必ず。
「なぁ。確信は持てないから、まだ皆には言ってねぇことがあるンだ。いいか?」
涼清が口を開いた。
「なんだ?気になる、教えてくれ」
「分かった。.......実は、お前らの過去の話を聞いていて気付いたんだよ。全部、起こった時間が同じ時間帯って事に。スキアはよく覚えてないみたいだが、そうだよな?スカイ。前に話してくれた時、お前たちは23時だったと言ってた」
「.......どうなんだ?スカイ」
俺は、隣でハッとした顔の弟に問掛ける。すると、少し間が開きながらも答えを言っていく。
「うん、そう。あの日、詳細には僕らの誕生日の11月21日の、パーティが終わって少し経ったあとの時間。弟と妹もぐっすりで、僕ら5歳だった2人もようやく眠れそうって時だった。ウトウトしながらだったけど、暗い中、月の光で時計だけは見えてたと思う。.......そうだ、23時だった」
「.......そうなのか。.......なぁ、スカイ俺も何があったのか思い出したいんだ、教えてほしい」
「ダメだよ、教えない」
「.............。そうか」
頑なに、俺の隣では詳細な出来事は話してくれなかった。
だが涼清はそれでも良かったらしく、うんうんとうなづいた。
「やっぱりな。.......思い出したくもないが、俺たちの時は昼の14時。時間が違うと思うだろうが、お前たちの実家のロンドンと日本の時差はマイナス9時間だ。だから同じ時間帯。.......おかしいよな?チームでやったにしても、実行した時間が同じってのは。詳しい時間は、輝に頼んで過去に行かないと分からないが.......これだけでも、相手が少しだけ見えてくると思う」
「他の奴らにも念の為聞いてみよう」
「あぁ。そうしよう」
新たな事実が出てきたが、それも含めて今回の計画を立てる。
モノクローズハウスには何かある筈だと思っている。必ず、どうやっても必ず行ってみせる。
「.......よし。今すぐ春の家に行こう、道中の悪霊達なら俺に任せろ。泊まってるなんてそンな時間より、早く神の国まで行って2人に言わなけりゃいけねぇ」
「涼がいいなら、そうする。行こうスカイ」
「うん、行こうか」
急にではあるが、春歌の家に行くことにした。
身支度もそこそこに俺たちは急いで春歌の家へ向かった。
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