あの桜の夢
なんやろ...この場所...
暗くて、よう分からへん...
遠くから、声が聞こえてくる...
「あ゛ぁ゛あぁ゛あ゛あ゛!!!!」
誰の、叫び声やろ...
聞き覚えのある声や...
「港!!!
「いやゃ、おかあちゃん!おとぉ、どうしてあないなっとるん?こわい!」
「分からないけど...でも、でもっ...私じゃどうにも...!」
おとぉや...荒れ狂うて、自我も無くなりかけとる、あの日のおとぉや...
優しかったおとぉの、最後の叫びや...これは...。
「ぁ゛、ぐ、ぁあ゛!!」
苦しそうにもがいとる...
誰か、誰か助けたってや...!
「港! 危ない!!」
おとぉの荒れ狂うてるのを呆然と見つめとった。
その間に、おかあちゃんが、ウチを守って、何かに刺された。
「御札」や、これは。
せやけど、陰陽師が使うそれとは違うやつやった。
おかあちゃんが倒れたのに目を取られとるうちに、今度はおにぃが「御札」に刺された。
バタバタ倒れた。
双子のおねぇの
ほんで、最後に、おとぉの悲鳴が聞こえんくなった。
そこには、ウチの家族は誰もおらんくなった。
居るんは雪男、牛鬼、猫又、牛頭、馬頭、雪女、ろくろ首、つらら女、山女だった。
消えていった家族たち、それを見ていた傘下の妖怪達の、唖然とした顔が頭に残る。
そこからウチは、東京の人外専門の学校に連れてこられた。
東京には、とぉちゃんの人間の知り合いがおるから、そん人んとこに行きんさいとつらら女に言われた。
せやけど、そん人はとぉちゃんが妖怪やいうことも知らんかった。
最初は可愛がってくれとった。
せやけど、大きい悪い妖怪がそん人を食べようとした時にウチが力で助けたら
「バケモノ!!!!!」
そう言い放って、そこからウチはそん人にたくさん蹴られて殴られて、傷もぎょおさん出来た。
スグにそん人から離れて、京都に戻った。
雪男が心配してくれて、ウチは寮に入った。
それでもまだ、あん人がこの東京に居るんは変わらへん。
そう考えると、怖くて怖くて、眠れへんほどや。
あぁ、ダメや、思い出したら怖なってきた...。
はっと目を覚ますと、もう朝になっていた。
嫌な夢や...寝汗がひどい。
「当主様...?お目覚めですか?」
「つらら女...おはよう、すんまへんな、少し寝すぎてしもた」
「いいんです!ごゆっくり...」
「いま起きるさかい...」
つらら女は、そんな男を紹介しウチを送り出してしもたことを後悔し、悔やんで、それからあんまり目を合わせてはくれんくなってしもた。
「つらら」
「へ?は、はい」
「.....やっぱなんでもあらへん、気にせんといて」
「は、い.....」
起きると、食卓にはスキアとスカイもおった。
「おはよ、.....なんだよ、顔色わりーぞ?」
「具合悪いの?」
「悪くあらへんよ、へーきへーき。さ、食べましょや」
.....もう過去の話や。今気にしとってもしゃあない事。前向かんといけまへん...せやけど、はよう、会いたいなぁ...。
なぁおとぉ、おかあちゃん、おにぃ、清水...いま、どこにおるん...?
寂しやないか...ウチの事、1人にせんでよ...
悲しい気持ちのまま、スキアとスカイは家を後にして、涼の家に行ってしまった。
今日はもう、休もう...無理や、落ち着かへんもん...。
「雪男...」
「はい?どうされました?」
「.......っ」
「えっ、と、当主様?なぜ涙がっ、え、えぇっ ...?」
「い、っしょに、寝てくれまへんか...?落ち着かへん、こわい.....」
「ぁ.....ええ、分かりました...さぁそれなら当主様、お部屋に...」
「雪男ん部屋がええ...アカンやろか?」
「い、いえ、分かりました」
今日はそのまま雪男の部屋で、一緒に寝た。
雪男は冷たいけど、暖かい...。
この時に見た夢は、幸せな夢だった。
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