第6話 恋星高校恋愛学科 3
退学を懸けるだけでなく、結婚という人生の中の一大イベントと自分の夢を天秤にかける恋星高校恋愛学科のルール。それを聞かされ、教室は未だざわついていて。周りを見渡すと、ほとんどの生徒達が戸惑いを隠しきれない様子である。
まぁ、気持ちは分からんでもないが…多分これだけでは終わらない。そんな嫌な予感をビシビシ感じる。
だってほら、その証拠に大井先生の目を見てごらん?「この程度で済むと思うなよ」――そう言ってるように見えません?
「先生」
しかし、俺の心の中の問いかけなんて誰も聞いているはずもなく。このままだと情報を聞き漏らしてしまうのでは、という一抹の不安をぬぐい切れず、俺は柄にもなく手を挙げた。
周りの生徒の注目を一身に浴びる。――皆さん、そんなに見られると話しにくいんですが…。っていうか先生、なぜ睨むんですか…?
「なんだ?まだ文句でもあるのか?」
大井の目が「一言でも文句を言いやがったら100倍にして返す」と言っている気がするのは俺の気のせいだろうか…いや、決してそうではないだろう。
敵を目で殺すとはこのことを言うのだろうな。っていうか先生、さっきの巨乳美人と扱い違いすぎじゃないですか…?
「いや…ルールってこれで全部ですか?正直これで全部とは思えないですし、まだあるなら、とりあえずルール全部把握しておきたいんですけど」
目が合うと殺されそうだったので極力顔を見ないように質問してみた。
「あ?お前、名前は?」
「氷室辰巳ですけど…」
「なるほど。なかなか冷静な奴だな…いや、ひねくれてるだけっぽいな」
だから、扱いの差っ!!まぁ、当たってるから何も言い返せないけど!!
「だが面白そうではあるな」
そう言って、先生は不敵に笑った。――笑顔怖っ!!
…っていうかなんだかんだで気に入られたっぽい…まぁ、嫌われるよりはましか。
どうやらこの教師は気に入った生徒には名前を聞くらしい。
そして先生に褒められたからだろうか、周りの生徒からの視線もどこか尊敬の念が込められている気がする。
…そう言えば、最初に大井先生のお気に入りリストに登録された巨乳少女――たしか、市川だったか――はどんな反応してるんだ…?もしかして、先生のお気に入り同士興味津々なのでは?これはもしかしていきなり恋のチャンスか?
…いや、もしかしたらライバル視しているのかもしれん…。しかしライバルだと思っていたのに気付いたら好きになっていたっていうパターンもあり得なくはない!!
期待に胸を躍らせ、俺はチラッと後を振り返った。すると…
「…なんか用?」
ザ・無反応!!
俺の視線の先にはつまらなさそうな顔の巨乳少女が。「話しかけないで」と目で訴えているように感じるのは俺の気のせいだと信じよう…。
「…いや、なんでもないです」
思わず敬語になっちゃったじゃん!!
やっぱりそこらのラブコメのようにはいかないか…。
現実の厳しさを痛感した俺は気を取り直して顔を前方に向け直す。
「とは言っても、残りは細かいルールばかりだ。生徒端末にも載っているから見ながら聞け」
いや、先に言えよ…。端末に載ってるならわざわざ質問する必要なかったじゃん!
無駄な努力をしてしまったことに若干肩を落としながらも、俺は自分の端末を操作し、校則のページを開いた。
「とりあえず順番に説明していくぞ。まずは――」
大井の説明が再開。
その説明を聞きつつも勝手に先の校則まで目を通してみると…さっき説明したものも含め、ルール(校則)は次のように記載されていた。
一、告白をしてフラれたら即刻退学。※但し既にペアを組んでいる生徒に対する告白は2回フラれた時点で退学とする。
二、8日以上恋人ペアがいない生徒は退学。
三、卒業する生徒は、卒業時の恋人と結婚する。
四、恋人同士になった生徒は部屋を共有し、共同生活をしなければならない。
五、卒業の資格を得た者には返済無用の奨学金や希望進路への推薦等優遇を約束する、
六、主席卒業者には当人の願いの実現に向け、学校が可能な限り援助する。
七、告白し、成功した場合は告白した生徒に100ptプラスされる。
八、告白され、フッた生徒は告白してきた相手のポイントを半分受け取れる。
九、ペアの解消は何度でも可。※その際ポイントはそれぞれの個人ポイントが配分される。
十、四半期が終了する度に、各クラス最下位のペアは退学とする。
以上、左記ルールを破ったものは退学処分とする。
「かなり厄介だな…」
さすがは卒業率3%。そこまでして卒業させたくないのか、と言いたくなるレベルだ。特に、七以降とか明らかに生徒同士でつぶし合わせようとしてんじゃん!
でもまぁ、今はとりあえずさっさとルールを覚えて優位に進めないとな…。
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