その九 パンゲア
壱
ついに津軽海峡を越えた。ここまで来るのは生まれて初めてだ。この旅もついにクライマックス。話はいくつも聞いたが、さらにそこから厳選するつもりだ。これが一番と感じた話には、提供者に何か贈ろうか。そんな話を祈裡としている。
今向かっているのは、レストランだ。そこに相手が待っている。
店内に入ると、混んでいた。今日は休日だし時間帯は昼だし、当たり前と言える。
「あ、あの子じゃない?」
祈裡が先に発見した。今日、話を教えてくれる人。美術高校に通っているらしく、目印にわかりやすいベレー帽をかぶっていた。
「こんにちは。
「…はい、そうです」
頷いた。本人のようだ。
氷威と祈裡が席に着くと、店員がお冷をくれた。それを一口飲んで、ノートパソコンを立ち上げた。
「…今日お2人に話したいのは、パンゲアという話です」
それだけ聞くと、どうしてもウェゲナーの大陸移動説を思い浮かべてしまう。でも内容は別物らしい。
「…お2人にだけ、特別ですよ? 本当は信じてもらえないだろうから、話したくないんですけど…」
紗夜はそう言ったが、彼女の目が嘘を言っているようには見えない。
「信じるよ。全部ね」
今まで会ってきた人たちは、他人なら嘘の一言で片づけられるような話を持っていた。でも氷威も祈裡も、疑ったことはない。相手が語る話を、怪談話として聞くだけだ。
「…これは、とある人の話です」
話はそこから始まった。
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