伍
「それで、どうなったの?」
祈裡が聞く。
「アラワれたのは…インチョウセンセイ…。ワタシは…タスかった…」
女の子はそう言った。助かってなければここにいない。当たり前か。
「そのケイって子は、どうなったの? そもそも本当に存在したの?」
「俺が病院の知り合いに聞いたところによれば、実在していたのは本当だぜ。でも、入院中に原因不明の病死。院長先生もそれが気がかりで、ケイの死後、毎夜毎夜病院を見回るようにしたんだと。静が院内教室に走っていくのが見えて、何か起きたと直感したらしい」
男の子の話によれば、院長先生が駆け付けたのは偶然ではなかったようだ。
「ケイは…そのアト…。ワタシは…まだスコし…ニュウインしてたけど…ミなかった…」
女の子は話をやめた。その後すぐにデザートが来て、食べ終えるとそれぞれ部屋に戻った。
「そう言えばどうして霊安室なんかに行ったんだろうね? 違う所に行けば逃げる選択肢は他にもあっただろうに」
祈裡の言う通りではある。だが氷威は、もう結論を出していた。
恐らくケイは、幽霊になった自分が犠牲にならなければ、あの子を助けられないと思ったのだろう。そして最後の場所に霊安室を選んだのは、既に死人の自分が本来病院にいる場所は、霊安室しかないとわかっていたからだろう。
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