「それで、どうなったの?」

 祈裡が聞く。

「アラワれたのは…インチョウセンセイ…。ワタシは…タスかった…」

 女の子はそう言った。助かってなければここにいない。当たり前か。

「そのケイって子は、どうなったの? そもそも本当に存在したの?」

「俺が病院の知り合いに聞いたところによれば、実在していたのは本当だぜ。でも、入院中に原因不明の病死。院長先生もそれが気がかりで、ケイの死後、毎夜毎夜病院を見回るようにしたんだと。静が院内教室に走っていくのが見えて、何か起きたと直感したらしい」

 男の子の話によれば、院長先生が駆け付けたのは偶然ではなかったようだ。

「ケイは…そのアト…。ワタシは…まだスコし…ニュウインしてたけど…ミなかった…」

 女の子は話をやめた。その後すぐにデザートが来て、食べ終えるとそれぞれ部屋に戻った。


「そう言えばどうして霊安室なんかに行ったんだろうね? 違う所に行けば逃げる選択肢は他にもあっただろうに」

 祈裡の言う通りではある。だが氷威は、もう結論を出していた。

 恐らくケイは、幽霊になった自分が犠牲にならなければ、あの子を助けられないと思ったのだろう。そして最後の場所に霊安室を選んだのは、既に死人の自分が本来病院にいる場所は、霊安室しかないとわかっていたからだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る