弐
「町外れに心霊スポットがあるんだって!」
当時同じ班だった
「幽霊? いるわけねえだろそんなもの!」
そう返したのは
「何だよ小野寺、ノリが悪いじゃないか。もしかして怖いの?」
「何だと植木! 俺を馬鹿にしてんのかよ!」
放っておくと、勉強だの成績だのといつまでももめる。
「まあ待て」
私は2人を止めた。
「小野寺が馬鹿なのは確かだが、植木も威張れるほど好成績じゃないだろ。」
こう言うと、大抵2人は止まる。
止まったところで遠藤が、
「行ってみようよ良子。お化けが出るかもしれないんだよ?」
私としては、遠藤の話に乗ってみるのも悪くないと思った。だが小野寺と植木は、
「お化けが幽霊がって、子供かよ? 俺はそんなモノ、絶対に信じねえよ」
「僕も流石に。心霊スポットって、行って良かったって話は聞かないな…。別に怖いわけじゃないけど」
怖いくらいに消極的だった。
「2人とも口だけだな。小野寺は存在しない、植木は怖くない。ここで叫んでても、説得力の欠片もない」
あえて挑発した。すると、
「何だと熊谷! よーし見てろ、俺に泣きついても知らねえぞ!」
「本当に怖くないさ。場所がどこでもね!」
と言う。小野寺も植木も、扱いに慣れればなんてことはない。
「じゃあさ、終業式始まる前に予定建てようよ。私多分赤点だから、夏休み中のこの日は駄目で…」
遠藤が手帳を開く。
「俺もその週は補習だぜ」
「僕はいつでもいいけど?」
「私は早い方がいいな。面倒な用事は休みの前半に済ませたい」
ということで、心霊スポットに行くのは7月下旬となった。
集合場所は、学校最寄りの駅。それぞれ高校生になって知り合ったから、それが一番早かった。
私は夜九時に着いて、一番乗りだった。その後遠藤がすぐやってきた。
「後は小野寺君と植木君だね。待とうか」
しばらく2人で待った。
目の前に車が1台止まった。そこから植木が降りてきた。
「本当なら時間通り間に合うはずだったんだけど、交通事故で道路が通行止めになっててさ…」
と謝ることよりも言い訳が先だった。
「後は小野寺だけか…」
私が言うと後ろから、
「俺ならもういるぜ?」
と声がした。振り返ると小野寺がいた。
「お前たち、遅すぎだぜ。もう何時間待ったか…」
私が一番だったので、小野寺は遅刻で間違いない。遅れてきたのを誤魔化してきた。
「みんな揃ったなら、行こう!」
遠藤が歩み出そうとした時、私が止めた。
「ビデオカメラを持って来た。これで撮影してみよう。写真も撮れるから、撮るぞ。並べよ」
小野寺、遠藤、植木の順に並ばせ、写真を撮った。
「それでいいか? じゃあ、早く行こうぜ!」
小野寺が急かした。やけにはしゃいでるなコイツ。
「そんなに急いで。後で泣いても知らないよ? ま、僕は全然怖くないけどね!」
そういう植木は、少し震えている。強がってる証拠だ。でも先陣を切ろうとする。
「しゅっぱーつ!」
遠藤はいつも通りだ。緊張感が全く感じられない。目的地は遠藤しか知らない都合上、もっとしっかりしてもらわないととても不安なのだが。
これから心霊スポットに向かう一行とは思えない。でもそれぐらいで十分だ。変に怯えていてもことが進まないから。
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