伍
あと1年。忘れないと私、本当に死んじゃうのかな? Rも覚えているのかな? 忘れないといけないけど、そしたらRのことも忘れてしまいそう。
意味不明でした。
何を忘れるの? 何で死ぬの? それにRがどうして関係あるの? そんな話題、姉は1度もしたことがなかったです。
私は日記を読み進めました。すると、その話について段々わかってきました。
その言葉を二十歳まで覚えていると、その時に死んでしまうこと。
その言葉は小学生の時に、Rから教えてもらったこと。
その言葉を姉は、1度も忘れたことがないこと。
その言葉を中学時代は、Rにはいつも言い続けていたこと。
その言葉は忘れるべきだけど、Rと関係あることは忘れたくないとのこと。
その言葉を言えるのは、この日記の中だけとのこと。
「なるほどね…。お姉さんとRの間にある、2人だけの秘密みたいなものか。その言葉、ここで教えてはくれない? 希望があれば公表はしないよ」
「…できません。呪いが本当なら、私で終わらせるつもりです。他の誰も、巻き込みたくないんで」
そして二十歳の誕生日が近づくにつれて、日記はその言葉の話題しか書かれなくなりました。違うことが書かれるとしたら、Rのことだけでした。
「でもどこか、何か見えない未来に希望を見出そうとしているところはありました」
死にたくないとかは書かれてませんでした。それどころか呪いに抗えたら、Rと会いたいとも書いてました。
私は1度日記を閉じました。これを読んでいっても、姉にはたどり着けないのではないかと疑問に思ったからです。それに呪いで人が死ぬなんて、考えられません。
その後半年ほど経ちました。姉は行方不明のままでした。
「Rの誕生日は、姉の日記に書かれていました。私は、Rの方こそ呪われるべきだって去年の10月28日に思いました」
その時に、ふと頭に浮かんだんです。あの呪いの言葉。そして、姉の日記を最後まで読んでいないことも思い出しました。
私は日記を取りだして、読みました。
日記は5月12日までは、前に読んだ内容と雰囲気は変わってませんでした。
「でも、姉の二十歳の誕生日…。書かれていることに目を疑いました」
今までずっと誤魔化してきた。本当は、Rはもう私の目の前に現れてくれないこと、昔からわかってた。それでもRのことを考えずにはいられない。きっとこれが私に与えられた、呪いの真価なんだ。もうこれ以上生きても不幸しか私には訪れない。死後の世界があるというのなら、先に行ってRのことを待とう。そっちでなら誰も、私がRと一緒にいることに文句は言わないだろう。
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