弐
その子は名前を
コンビニの都市伝説本を読んでいたので声をかけたら、自分も1つ知っていると言ったので教えてもらうことになった。
「このホテルと私のアパートを往復するのに、市バスを使うの。バスで30分。バイトは夜遅くまでかからないけど、私はいつも最終バスに乗ってるわ」
何でそんな事をするのかと聞くと、実際に連れて行ってくれた。
バス停で待っていると、バスが来た。でもそれは最終バスじゃないから乗らない。いつもはコンビニで時間を潰しているらしい。
「来たわ! このバスに乗るの!」
久姫と私は乗り込んだ。
最終バスと言うだけあって、バス内はガラガラだ。私たち以外に乗客はいなかった。一番後ろの席だからそれがよくわかる。
「私も最初は、最終バスに乗るつもりはなかったの。でもある時遅くなっちゃって…。それ以降はこのバスに乗るようにしてるわ」
私は久姫にどんな話なのか尋ねた。
でも久姫は、まだ待ってって言う。
だからその時が来るまで、女子トークで盛り上がった。他にお客は誰もいないから、大声で話をしていた。
バスが止まった。赤信号だからじゃない。でも、バス停でもない。もちろん私たちが降車ボタンを押したわけじゃない。
「来るわ。彼が」
「え、誰?」
私は久姫の顔を見ていたが、久姫は乗車口を見ていた。
ドアが開くと、中学生ぐらいだろうか? 帽子をかぶった男の子が1人、バスに乗り込んできた。
「こんな時間に、あんな幼い子が?」
どうして、と続けたかったけれど、久姫がそうさせなかった。
「静かに。見守っていてあげて」
私は黙った。運転手も、何も言わない。
男の子は、シルバーシートの前に立った。顔はよく見えない。
ドアが閉まって、バスが走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます