その二 バス停にて

 本土にやって来たのはいいんだけど、1つトラブルがあったな。

「うーむ? ここをこうして、別のウインドウが出てきて…。あ、マウスカーソルが動かない?」

 日本を回りながら怪談話を募集するためにウェブサイトを立ち上げることにした。それはいいのだが、それを沖縄にいる時に、出発前にやっておけば…。こういうのに強い同期も大勢いたのに。

 お情けで単位もらったと、改めて実感できる瞬間だ。ため息しか吐けない。

 なら祈裡に頼めばいいのだが、買い出し中だ。もっとも祈裡は祈裡で、日常雑貨を那覇空港に置き忘れるというとんでもないミスをしでかしたのだが。

「もう1時じゃないか。何処まで買いに行ってるんだ?」

 そんなに多い買い物じゃないはずだが。道に迷っている? それはない。だってホテルの隣にあるコンビニに向かったからだ。

 氷威がスマホを取って電話をしようとした時、ドアが開いた。

「ただいま!」

 祈裡はやけにニコニコしている。

「随分と遅かったじゃないか。那覇まで取りに戻ったのかと思ったぞ?」

「コンビニで会った人に怪談話聞いたの。そしたら長くなっちゃって」

 それなら仕方ないか。

「氷威にもちゃんとわかるように咀嚼してきたから、よーく聞いてよ」

 祈裡はノートパソコンのフリーズに対処しながら、話を始めた。

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