大賞を受賞いたしました!『第1回 角川武蔵野文学賞』
かねてより「獲りたい、獲りたい」と言い続けていた『第1回 角川武蔵野文学賞』の大賞を、なんとか射止めることができたのでご報告を。
短編の賞とはいえ、まさか一年に二回も大賞受賞の報告ができるとは嬉しい限り。応援してくださった皆様に、最大の感謝を!
まぁ、受賞作でも読んでいってくださいな。
----------
◇『創生の巌 ~ 武蔵野今昔がたり』無辺の萱原、深緑の林、武蔵野の明媚はどこへ。今と昔そしてこれからの物語
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917932828/episodes/1177354054917932969
----------
せっかくなので、執筆裏話でも……。
執筆に際して、まず『大賞を獲る』ということを決めた。
キタハラ先生にエントリをすすめられたとき、実は乗り気ではなかった。しかし武蔵野に居を構えていながら、武蔵野の名を冠した賞を見送るのもどうかと思い直してエントリすることにした。
そして、やるからには獲ろうと決めた。
そして獲るために、前回の『カクヨム夏物語2020』のときと同様、『書きたい小説を書く』のではなく『賞が求める小説を書く』ということを念頭に執筆しようと決めた。
民俗学者の赤坂憲雄先生が審査員を務められるとのことだったので、先生の著作を何冊か読んでみたりもした。
そうやって準備をすすめる中で頭を痛めたのは、『なにを書けば武蔵野をえがいたことになるのか』ということだった。
武蔵野を舞台に物語を紡げば、それでいいのだろうか。
武蔵野を舞台に、新社会人を主役に据えて一作書いてみた。書いてエントリはしてみたのだけれど、どうも賞が求めている要件を満たしているとは思えずにもう一作書くことにした。
もう一つの心配事は、果たしてカクヨムの短編賞を、連続で受賞できるのだろうかということだった。選考の過程で「前回大賞とってるから、今回は別の人の方がいいんじゃない?」なんて力が働かないだろうかと心配もした。
だがたとえそんな力が働いたとしても、拙作を選ばざるを得ないような圧倒的な完成度で挑むか、もしくは他の参加作のどれとも違う形をした小説で挑むしかないのだろうと考えた。
こうした苦悩の末に生まれたのが、『武蔵野の美の変遷を全て書く』という無謀な発想だった。何万年にも及ぶ時の流れを描くために、登場人物をどうするのかということが、最大の問題だった。
悠久の時の流れの中で変わらぬ物として、巨大な巌を配した。内緒話ではあるのだけれど、実はこの配置は角川武蔵野ミュージアムの外観を意識してのことでもある。かのミュージアムの外壁には花崗岩で覆われ、水盤にたたずむ巨大な巌のごとき外観だと伝え聞く。
そしてこの巌に宿るものとして、武蔵野各地に伝承が残る『デエダラボッチ』を土着の神として配して主役とした。そしてデエダラボッチをたずねる土着神『ミシャクジ』を配した。
こうして二柱の土着神による武蔵野語りという枠組みができあがった。二柱の上に武蔵野の美の変遷を語ってもらい、「かつての美が失われてしまった」と嘆くのではなく、今のそしてこれからの武蔵野の美とは何なのかを語ってもらおうと考えた。
そうやって書き上げた小説を読み返して思ったのは、「果たしてこれは、武蔵野文学と呼べるのだろうか」ということだった。文学賞への応募作であるからには、文学性のカケラくらいは内在するべきだろう。
確かに武蔵野のことは書いている。そしてなんとか、小説の体裁は保っている。しかし文学なのかと問われれば不安は残る。
とはいうものの、他のどの参加作とも違う形をしているし、賞の求める要件を満たしているのかどうかは判らないが、方向性は合っているように見えた。故に、書き上げたままの形でエントリすることにした。
この小説に賞をいただいたということは、少なからず文学性のカケラくらいは在ったのだろうと胸をなでおろしている。
振り返ってみれば、たった三千文字の小説を書くために、膨大な時間を費やした気がする。苦悩も多かった。それだけに、今回の大賞受賞の喜びはとても大きい。
しかし、『カドカワ夏物語2020』のときにも言った気がするが、まだスタートラインにも立っていないということだけは再認識しておこうと思う。俺は職業作家になりたいのだし、今回の受賞ではその場所まで届かないのだから……。
----------
さて、角川武蔵野文学賞関連の情報でも、まとめておきますか。
11月06日が角川武蔵野ミュージアムのグランドオープンだそうで、併せて授賞式が行われる予定だったらしい。しかしながらコロナの影響で開催未定。さて、どうなりますやら。
角川武蔵野ミュージアム五階のギャラリーで、武蔵の文学賞の展示があるとかないとか。実は詳細はよく解っていなかったりする(汗)
実際に行って、確かめてこようかな……。意外と近所だし。
11月06日 発売の『武蔵野樹林 vol.5 2020秋』にて、受賞発表があるようだ。そして来年2月発売予定の『武蔵野樹林 vol.6 2021冬』にて、受賞作が掲載されるのだとか。
----------
さてさて……。
短編の賞もいいけど、そろそろ長編の賞にも食い込んで書籍化を狙いたいところ。投稿サイト主催の賞はいろいろと消耗が激しいから、紙媒体の公募にシフトしようか……なんてことも考えたりする。
今年のカクヨムコンは、パスするかもしれない。その分、公募に力を入れてみようかと……なんて言ってるけど、実はなにも決まっちゃいない。まぁ、いつものことだ。
夏に続き連続で大層な賞を頂戴した訳だけれど、受賞に慢心することなく書き続けていく所存。これからも、どうぞご贔屓に……。
◇『創生の巌 ~ 武蔵野今昔がたり』無辺の萱原、深緑の林、武蔵野の明媚はどこへ。今と昔そしてこれからの物語
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917932828/episodes/1177354054917932969
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます