無限に伸びてけ彼女の期待値
「ただいまーッ!」
「おかえりー」
向島大学に入学して、いよいよ本格的に春学期の授業が始まった。1限から4限までみっちり授業を終えてまっすぐ家に帰ると、今は星ヶ丘大学の4年生でタレントとしても活動しているお姉ちゃん、岡島水鈴がリビングでお茶を飲んでいた。
「奈々、授業はどうだった?」
「長いッ!」
「1コマ90分だからねー。サークルとか部活はやるの?」
「そうッ、ミーちゃん聞いてッ!」
入学してから昨日までは、学部のガイダンスや履修登録、それから健康診断なんかがあってバタバタしてた。そんな中で大学だなーッて思ったのは、少し歩くだけでもサークルの勧誘の人がビラを配って来て。
うちは高校では合唱部だったけど、大学では新しいことを始めてもいいかなーとか、少し体を動かせるようなところもいいなーって、ミーちゃんの話も聞きながらいろんな風に考えてたんだけど。
一昨日だったかな、放送サークルのビラを配ってた女の先輩がすっごい綺麗で優しくて、きゅーんッてしてッ! ピンヒールの編み上げブーツがカッコよくてッ! 良かったら見学に来てって言われたからちょっと興味があって。
「えっ奈々一目惚れ?」
「一目惚れでも嘘じゃないッ! ホントに綺麗で優しくてーッ、美脚でーッ」
「放送サークルねえ」
「あっ、ミーちゃん星ヶ丘の放送部だから感じわかる?」
「アタシはインターフェイスの活動とか出てないから他校のことはよくわかんないけど、雄平なら知ってるんじゃないかな」
「ミーちゃんもしや雄平さんと喋る口実にしたり」
「するよねーッ!」
「ですよねーッ!」
ミーちゃんは星ヶ丘の放送部で活動していた。星ヶ丘の放送部はステージイベントをやったりするのがメインなんだって。だけど、このビラを見る限り向島大学の放送サークルはラジオみたいなことがメインみたい。
話によれば星ヶ丘の放送部は、向島や緑ヶ丘、他にいろんな大学が加盟する向島インターフェイス放送委員会っていうのに属してるって。でもミーちゃんはステージMC一本だから、ラジオの活動がメインとなるインターフェイスの活動には参加しなかったんだって。
ここでミーちゃんの人脈がフル稼働。インターフェイスに星ヶ丘の代表で出ていた雄平さんって人が向島のことも知ってるから聞いといてくれるって。でも、ここだけの話、ミーちゃんは雄平さんのことが好き好きーッて感じだから、うちのことはお喋りのきっかけだよね。
「もしもし雄平ーッ?」
「――ってミーちゃん今聞く!?」
「うちの妹ー。うんそう、奈々。その奈々がさ、今向島大学に入学したのね? あ、ありがとう。それで、向島の放送サークルに興味あるんだって。綺麗で優しい女の先輩に勧誘されたとかで。雄平って向島のこと何かわかるー?」
ミーちゃんは本当に恋愛に押せ押せだなって思う。元々の性格もだろうけど、お父さんが転勤族みたいな感じで引っ越しを繰り返してたから言いたいことは言う、やりたいことはやるってスタンスになってるんだろうな。大事な人と遠く離れて会えなくなる前に。
「へー、そうなんだ。ありがとーッ! うん、奈々に参考にさせるーッ! 今度寿さし屋でソフトクリーム奢るねッ! はーい、じゃあ明日ねーッ」
「ミーちゃん何か聞けた?」
「奈々、雄平が入学おめでとうって」
「あざっす。うっすうっす。ってそうじゃないッ!」
「わかってるって。向島のサークルはね、少数精鋭で実力があるっていうのと、ミキサー……ああ、喋りじゃなくて機材の方志望だったら特にオススメだって。あと、サークルの人たちのキャラがすっごい濃いとか。向島はインターフェイスにもよく出るから他校にも友達が出来るだろうって」
「へー、楽しそうッ! それに菜月先輩もいるし行かない理由がなくなって来たよねミーちゃんッ!」
「1年のこの時期なんていくらでもやり直し利くからね。行ってみて合わなかったらやめればいいんだし。見るだけ見てみたら?」
「そーするッ!」
とりあえず、いい感じの情報は入ったし、何より菜月先輩(勧誘された時に名前は聞いてた)が綺麗だし可愛いし優しいし美脚だし、一緒にいた後輩の男の人にも慕われてるっぽかったしマジで一目惚れだから挨拶はしておきたい。
「あ。奈々、雄平から追加情報来た」
「何てッ!?」
「奈々が言ってる綺麗で優しい女の先輩って人、インターフェイスでも1、2を争う実力者の子じゃないかーって、アナウンサーの」
「凄すぎっす!」
綺麗で優しくて可愛くて美脚で後輩から慕われててその上実力者とか菜月先輩マジ凄すぎっす、うっすうっす。今日が木曜日だから、ビラによれば明日は活動日。明日か来週の月曜日にでもサークルの見学に行ってみよーっと。
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