述懐/マキツカサ
マキツカサについてはこう記されていた。
死亡当時の年齢は十六。役所に勤める真面目な父と母の下に生まれ、姉が一人いる。
家庭環境としては至って平凡で、特筆するような問題点はない。
非行に走るような傾向もなく、友人の数は多くもなく少なくもない。学業成績は優秀な部類に属するが、特別秀でているわけでもない。
慎重で思慮深く、自分の意見を強く発信するタイプではなかった。
チームの中で最も目立たず、影響力のない存在だと思われていた。
でもチームの役割としては彼女こそが“
元々与えられた役割は心臓ではなかった。それは間違いない。
でも彼女はきっと扉を開けたのだろう。道端に落ちている石が本当はダイヤの原石だったというところかな。
ボクが幸運なのか、彼女が幸運なのか、それとも他のメンバーが幸運なのか。
彼女はボクたちをよく花にたとえる。
それはボクにとって贈り物だった。紫陽花に似ている彼女からいわれた言葉はボクの大切な物になった。
でも不思議なことに、自分を花にたとえる時だけ、彼女は少しだけ寂しそうな顔をした。
……どうしようかなとボクは思う。どうすれば彼女に紫陽花の美しさを教えられるのか迷う。
どんなものを贈ればいいのか、そればかり考えてしまう。
そればかり考えてしまう自分が、不思議で仕方がない。
ああ、そうか。ボクも変わったのか。誰かを変えたいと思うようなボクに、たぶん変わったんだ。
もうじきに旅が終わる。
よって以上でマキツカサについての述懐を終わることにする。
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