述懐/ツキモトリョウタロウ

 ツキモトリョウタロウについてはこう記されていた。


 死亡当時の年齢は十六。ギャンブル依存症の父と浮気癖のある母の下に生まれる。三つ歳の離れた妹が一人いる。

 家族の生活費と妹の学費のために休日もろくにとらずアルバイト漬けの日々を送っていた。

 郵便配達のアルバイト中に睡眠不足と過労の結果から交通事故を起こしてしまい、そのまま意識不明の重体となった。

 行動力と決断力に優れ、他者を引っ張るリーダーシップも持ち合わせる。


 チームとしての役割は“骨肉ボディ”。


 レースの中で何度も直面するであろう逡巡や躊躇の中で、最終決断を下す、或いは決断を下す人物を選定することを期待して選ばれた。

 ただしその性質ゆえ、独りよがりな行動や思考に陥ったり、責任を過剰に背負い込む可能性があるのでそこには注意が必要。

 義に厚い性格をしているので、彼に信頼されるためには、彼に対して相応の信頼を示す必要がある。


 本人の能力がおしなべて平均以上なので、チーム意識が希薄になりがちなところがある。彼自身も自覚していない弱さに気づき、フォローできる存在が望まれる。



 ……だからかとボクは思う。誰か特定の相手のために自分の人生を捧げる。人が生きる理由には様々なものがあるけれど、どうやらその中でも最も生きる意欲が強くなるものがこの形らしい。

 自分が死ねば、その相手も死ぬ。

 だとしたら彼への贈り物は、同時に彼女への贈り物でもあるということなのだろうか。

 全く同じ贈り物でも、受け取り手次第で、その贈り物の価値が変わってしまう。

 どれだけ考えても、それがいいことなのか悪いことなのか、今のボクにはわからなかった。


 よって以上でツキモトリョウタロウについての述懐を終わることにする。

 



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