述懐/セラシオリ
セラシオリについてはこう記されている。
死亡当時の年齢は十八。外科医の父と麻酔科医の母の下に生まれ、兄が二人と姉が一人いる。
しかし兄妹間でも日々競い合うような特異な家庭環境に馴染めず、他の家族からは失敗作として赤の他人のように扱われていた。
不登校児であり、友人はおろか知人と呼べるような相手すらいない。
自由で他者に依存しない人格をもつ一方、純粋で人の本質を見抜く才覚を持つ。
チームの役割としては“
レースの中でチームが疲弊し、向かう先を見失い、立ち止まった時でも、他のメンバーの心を腐らせないように巡り続けることを期待して選ばれた。
ただしその貢献に対して自覚が難しく、最も変化を促されない存在でもあるので、そこには注意が必要。
最初から最後までの精神の不変性が求められるのと同時に、自分の心の中で唯一変化すべき箇所を探す必要がある。
チームの中で最も孤独な戦いを強いられることになるので、その孤独に気づくことのできる存在が望まれる。
……なるほどなとボクは思う。こうなると自らせっかくの贈り物を捨て去ってしまっても仕方ないと。
せっかく贈り物をしても、こんな風に使われることがきっと少なくない。
ここに記されていることが珍しい事例ではないと理解すればするほど、次の贈り主になる気が失せてくる。
よって以上でセラシオリについての述懐を終わることにする。
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