第16話 停めて走って

「さて、観客も少なくなったけど推理を始めましょう。その前にバカな警察は下りなかったね、それとものろまな警察だった」

「俺は俺の意思で残った」


 腕を組座る警察官。黒子は納得したのか後ろに座る五人に顔を向ける。


「妹さんからのメールを確認してもいいかしら」

「ああ、いいぞ」


 警察官から携帯を受け取り内容を見る黒子。俺は鏡でしかバス内部を確認できない。


「誠はまっすぐ前見て運転して」


 黒子はメールを見てるのになんで俺の行動がわかるんだよ!怖ーよ!


「なるほど、確かにこのメールで妹さんが何を伝えたかったはわからない」


 黒子から出た言葉に男(犯人)は怒鳴る。


「なんだよ、それじゃ警察と同じかよ!」


 警察を見ると微かに頬が上がってる。

 だが黒子は続きを話す。


「無能な警察には難しいだろうが私には簡単な謎ときよ」

 

 前を向いていてもわかる。黒子は笑っている。


「誠見える?妹さんからのメール」

「見えるわけないだろ!今運転中だわ!」


 さらに言うなら絶賛パトカーに追われてます。


「妹からのメールは簡単な暗号でできている。これは私よりあなたたちのほうがわかるのでは?」


 黒子はメールを五人とバスの運転手、警察官に見せる。


「このメールがなんなんだよ!」

「そうよ!訳わからないメールを見せられわからないわよ!」


 白いシャツを着た男と黒縁眼鏡をかけた女が言う。


「なるほど、俺には少しわかるかも俺もスマホを操作するのに苦労したからな」


 青い服を着た30代の男が言う。


「あなたのような警察は時代に取り残されてるからわかるのでは」


 また一言余計な事を言う。警察が黒子を睨む。


「それで妹さんのメールの暗号にこう書いてある。『ころされるばすのうんてんしゅ』だって」


 黒子につれられ乗客全員が目線を動かす。

 一番後ろの真ん中の席に座る白い手袋をはめた男。


「な、なんで俺が。そもそもコイツが言う乗客五人の中に俺はいなかっただろ!」

「それはいないでしょうね。彼はたぶんバス停で毎回乗る乗客をピックアップしていたのだしょう」

「そうだ。二カ月バス停に乗る乗客を探していた」


 黒子の推理に頷く男。


「つまり妹さんを殺した犯人はバスに乗る乗客ではなくバスを動かす人間が犯人だったのよ」


 俺も運転に慣れてきた。次の信号を右折して向かう建物。


「次の停車は警察署前、警察署前」

「何を言っているの誠」


 笑われたが気にしない。


「さあ、警察がここから仕事よ」

「どう言うことだ」

「探偵は犯人を見つけるのが仕事。警察は犯人を捕まえるのが仕事よ」

「ふっ、そうだな。さあ立て、お前には話しがある。そしてお前も話しがあるが自首として来たことにする」

「わかった。ありがとう探偵、これで妹の無念も晴れる」


 頭を下げる男に黒子は何も言わない。自分のやることはやったと顔をして席に座り外の景色を見ていた。


+ + + + + + + + +


 その後バスをうまく操作して近くの警察署に停める。バスの扉を開け降りる乗客と警察に連行されるバスの運転手。

 俺は自首しに行く男を呼び止める。


「気にしないでください。黒子はあなたが本当の犯罪者ではないことに安心しているので」

「それはどう言うことだ」

「それは俺もわからないけど、いい奴だってことはわかる」


 俺は黒子の後ろ姿を見て言う。するとクッルとこっちを見る。


「誠、早く食材を買いに行くんでしょ」

「なんで知っているんだよ」


 俺もバスを降りる。


「さてどうやって戻るか」

「もうバスは乗りたくないわ」

「そうだな。そう言えばメールにはなんて書いてあったんだ」

「んん」


 黒子が自分のスマホに怪文を打ち込み見せる『2↓9↓3○9→9↑6○*3↑5↓1↑0↑3←8↑』。


「なるほどね。スマホ時代だな」


 二人並んで歩く、向かうは商店街。

 何を見るか考えながら言葉は交わさない。

 これで今日の物語は終わり。


「おい、どこに行く」


 振り向くとさっき運転手を連れて行った警察が立っていた。


「お礼ならいいわ」


 黒子の解答に笑う警官。


「お礼はしてやる。今から無免許運転及び強要の罪で逮捕だ」


 俺は隣の黒子をみると姿がなかった。


「それじゃ誠がんばって」


 黒子はいつの間にかタクシーに乗り込んでいた。

 俺は仕方なく走り出す。


「おい待って!パトカーを出せ!」


 また大勢の警察から逃げ出す時間が始まった。

 本当に奇遇は不運だ。

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