盗塁されたホームラン

第7話 出たぞ!

「怪盗が出た!」


 それは朝の学校生活で普通では聞くことがない第一声。

 廊下に張られれた壁新聞に生徒たちが集まっていた。


「なんですか?」


 隣にいたシャロは人の群がりに気になり行ってしまった。

 シャロの特性、人が群がっているとそこになぜかそこに行く。


「ホームルームの時間までには戻ってこいよ」

「はーい」


 元気に手を振って離れるシャロ。


「本当に戻ってくるのか」

「それはどうかなー」

「おいおい、いつの間に隣に」

「ニシシッ、どうやら面白いことになってるみたいだね」

「面白いねー、笑えない」


 俺の隣で八重歯を見せ笑う少女の名は海藤 瑠奈かいとう るな

 探偵部でシャロが事件を解くなら、瑠奈は探偵部では盗難・探し物を取り扱う。


「あ、もうそろそろホームルームだ」

「それじゃ教室に行くか」

「あれ?シャロちゃんはいいの?」

「どうせ、遅れてやって来るさ」


 俺と瑠奈は教室に向かった。

 教室では朝の壁新聞の件で盛り上がっていた。


「それで、どうするんだ」

「どうするって?」

「お前今回この事件に首突っ込む気だろ」

「さーてどうだろう」


 変にごまかすとは、瑠奈の奴なにか裏があるな。


「瑠奈、今回の事件に助けは」

「助けは一人」

「そっか、昼休みでいいか」

「うんいいよ」

「了解」

「それじゃまたね」


 それぞれ席に着く。

 席っていっても俺の席右前に瑠奈が座る。


「席に着けー、はいはい新聞部の件はまた後でな」


 先生たちが騒がないということは先生たちも承知の件と言う事か。


「そろーり、そろーり」

「おいそこ、遅れてきたら堂々と入れ。今なら怒らないから」


 なんて優しい教師なんだ。


「はい!遅れました!」

「よろしい、ホームズ、君は減点」

「怒らないって言ったではないですか!」

「怒らないが、評価には付けるさ」

「そ、そんな」


 おお、怒らない優しい先生だが評価は厳しくする。

 まさしく教師の鑑。


「それじゃホームルーム何となく始めるよ」


 何となくなのね。

 やる気が何となく出す我がクラスの担任様のホームルームが始まる。

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