俺のペ◯スがカースな件について

白井 雫

序章 俺の人生が終わった件について

「ちくしょう! やっぱり俺には彼女なんて出来るわけなかったんだ‼︎」


ベッドに自分の体を打ち付ける。ペ◯スは自分の意思とは関係なく威風堂々と、天を貫いており、浮き出した血管はそれの興奮した様子を物語っている。

俺の名前は大岩月人おおいわつきと。しがない大学生である。俺は世間で言うところの童貞だ。それも彼女はおろか、女性に触れたことさえ記憶にない。童貞とは俺のためにある言葉ではないだろうか。俺の家はもともと色恋沙汰には厳しかった。親曰く、


「お前は赤ん坊の頃からエロい目つきをしていて、道行く人にも乳を迫ったり男湯に入ることを頑なに拒む。お前は生粋の変態だ。だから他の女の子と遊ばせるわけにはいかない。何が起きるかわからないからな」


ということらしい。

ひどい言われようである。別に当然のことではないのか。正直昔のことはあまり覚えていないが、俺は生きるために必死であったのだろう。それをエロいからだめ、の一言で片付けられてしまったら俺にはどうすることもできない。そのせいで俺は女性と遊んだことがない。だがそんな親でも大学生になったらもう自分で責任を取れるだろうということで女性と自由に触れ合える権利を俺に与えた。大学生にして親の鎖から解放されて、自由の翼を手に入れたのだった。

しかし、自由の翼は太陽の光によって燃え尽きてしまったのである。大学に入り彼女ができると思っていた俺にとって、自慰とは考えられる最も無駄なものであり、俺はセ◯クスをするまでは決してしないことにした。

しかしそんな希望も砕かれてしまった。さながら八月の終わりまで必死に鳴き続けるセミとでもいおうか。全くをもって女性と触れ合う機会がなかった俺は、女性と話すだけでも宇宙人との交流と等しいものであった。無論良い結果を生むはずがなく、俺は彼女が出来ないまま五ヶ月が経ったのだった。


五ヶ月、五ヶ月だ。もともと性欲が強かった俺にとって五ヶ月は永遠にも感じられた。無論常に勃起している。大学生になってから一度もしないのだから当然といえば当然である。その苦闘の中で俺は悟ってしまった。


俺には、彼女が出来ないー。


「くそっ、くそぅ‼︎」


そうなってから、己のモノをシゴくのに時間はかからなかった。手の中で熱く脈打っているモノは俺自身の怒りか、はたまたこのモノが子孫を残すことができる喜びによってなのか、俺には理解することができなかった。こするたびに今までにない大きさになっていき俺の想いに寄り添ってくれている気がした。その時間は一瞬とも永遠とも言えるようなものであった。


「はぁ、はぁ...やべっイキそう」


これまでに何度も迎えたこの感覚。ゴールテープを切ろうとぐんぐんと熱いものが登ってくるのがわかる。俺のペ◯スも今までの2倍、いや3倍まで膨れ上がっていた。

イケる、イケる、イケるー





ーぷつん


「あ、あれ?」


一瞬にして視界が黒で塗りつぶされる。それと同時に糸が切れたかのように俺の体は力を失った。











「こんにちは、...大岩月人さんですね? 残念ながらあなたは不幸な事故によって命を失いました」


気がつくと目の前に1人の女性が立っていた。俺と同じくらいだろうか、可愛らしい顔立ちで胸も大きく正に俺好みの女性だ。白いローブをまとっていて見ようと思えば肌まで見えてしまいそうなくらいに薄い生地だ。しかし、今気になることはそこではない。


「あ、あの、俺はしし死んだん...」


駄目だ、やはり思ったように言葉が出ない。なぜ死んでまで俺はこんな思いをしなくちゃいけないのか。


そんな俺の気持ちを汲み取ったのか女性が話し始める。


「もう一度言いますが、あなたは死にました。死因も...聞きたいですよね?」


たしかになぜ死んでしまったのか、疑問である。考えられる原因が思い当たらない。俺は何とかうなづいた。


「あの、あのですね。大変言いにくいんですが...あ、あなたのアソコにですねっ! 血が集まりすぎてそのショックで死んでしまったんです!」


頰を赤らめながらその女性は言う。


「私はこれでも死人の案内人を勤めさせていただいてます。それで、もうすぐ死にそうな人がいた時、私の管轄下の区域であれば連絡が来るようになっているんです。死因がわからないままだと成仏できない人がたまにいるからなんです。だから私たちが責任を持って見届けるという義務があります。それでですね、あなたの場合...」


そう言って案内人は俯く。当然だが状況は飲み込めない。


「じゃあ俺は自慰で死んだって言うのか⁉︎ そ、そんなバカなことがあってたまるか‼︎」


「そう言う人もいるんです。そういう時のために、こんな機能もあるんですが...」


案内人がパチンとスナップすると俺の目の前に小さな球体が浮かぶ。そこに映っていたのはつい先ほどの自慰をしていた自分自身であった。驚くのは自分のペ◯スである。3倍なんてくだらない、5倍ほどまでに膨れ上がっていた。そして、間も無く球体の中の俺は崩れ落ちた。よく見ると全身がミイラのようになっておりペ◯スだけが意気揚々としていた。


「...分かっていただけましたか? それでは、あなたを天国まで案内します。魂だけにはなってしまいますが、我慢してくださいね」


案内人が手をかざすと金色の階段が浮かび上がる。その階段の先には光で覆われていて直視することはできなかった。


「 な、なんだこれ⁉︎」


自然と光に向かって徐々に体が引き寄せられる。まるで水の中にいるみたいに上手く動くことができない。俺は、俺は童貞のまま死ぬのか⁉︎ 否、そんなことはできない‼︎


「うぉぉおおおおおおお‼︎」


引き寄せられる力になんとか抗い、俺はその案内人に抱きついた。


「ひゃあ⁉︎ な、何をするんですか⁉︎」


「俺は、俺は童貞のまま死ねなぁい‼︎」


そして俺はいつのまにか纏っていた衣を脱ぎ去り、ペ◯スを案内人の秘部にあてがおうとした。


その時、


「カース‼︎」


そう案内人が叫ぶと俺のペ◯スの周りに五芒星の結界のようなものがいきなり現れた。そしてその効果はすぐに身をもって知ることになる。


「あああああああああああ‼︎」


突如ペ◯スに稲妻のようなものが走る。俺はのたうち回った。


「どうやらあなたは天国にいける器ではないようですね」


そういうと女性は苦しむ俺の頭に手をかざす。


「あなたの...に呪印をつけさせてもらいました。今みたいにあなたが自分で行為をしようとすると電撃が走るようになっています。そして、今あなたは天国にいける器ではないことがわかりました。よってあなたを更生させる措置を取らせていただきます」


だんだんと俺の視界が光で覆われていく。しかし女性の声ははっきりと聞こえた。


「あなたは新たな世界で生きていくのです」

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俺のペ◯スがカースな件について 白井 雫 @soul_shooting-star

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