第20話ナナの目

 「ここは、いつか来たような、お兄ちゃんと」

 お兄ちゃんとは夫のアルバータの事である。

 お花畑をキョロキョロ見回しながら歩いていると、もっと小さかった時の出来事が甦る。

 夫と遊んでた時、ここをアルバータホールと名付けた事。

 忘れていたタンスの中から懐かしい物を見つけたような感覚であった。

 ふと顔をあげると、少し離れた所に二人の人影が。

 一瞬彼女は夫のアルバータと自分がいるかと思った。

 しかし、その二人は花の冠を被ったギアとナナであった。

 ギアはまだ所々あざや包帯がまかれている。

 ビクトリアがボコボコにした痕跡である。

 だがギアはゴキブリのような生命力で回復へと向かっていたのだ。

 そしてナナはスケルトンのカバーが無くなっていてちゃんとした顔の皮膚が戻っていた。

 これはナナの希望でジェシカに治してもらったのだ。

 その二人はビクトリアに近づき、花の冠をそっと彼女の頭にまるで鳥の羽根のようにふわりと優しく置いた。

「私たちと同じ冠よ」

 ナナはニッコリ笑う。

 ビクトリアはそっと頭に置かれたお花の冠を手をのばして触れてみると柔らかい花びらの感触と心地よい香りが漂う。

 「この花、お兄ちゃんが『ビクトリア』あたしと同じ名前をつけてくれたお花」

 ビクトリアは黄色いその花を眺めながらギアとナナの手の甲に手を置いて、ごめんなさいした。

 そして彼女はこの二人とお友達になった。

 「なんだか幸せそうですね」

 マリアが離れた場所でナナの目を見つめながらジェシカに聞こえるようつぶやいた。

 「ナナの目は人間の目じゃ」

 ナナがギアを見つめているのをジェシカは見のがさなかった。


 

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マナロイド 星ぶどう @kakuyom5679

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