第19話お花畑

 ギアが病院に入院する事になり、女の子グループはリョンドンの街を歩く事になった。

 女の子グループとはジェシカ、マリア、そしてお忍びのビクトリアである。

 ビクトリアはみんなにごめんなさいした。お散歩の時は知ってる顔に気付かれない様にクリスタルパレス級のハンチング帽子を目深に被り服装は清潔な白いシャツ蘇芳色(すおういろ)と深いブラウンが交差しているチェックのズボンをはいて男装していた。

 もともと髪は短い方なので顕微鏡を使わないかぎり遠目ではリョンドンの一市民に見える。

 ジェシカは相変わらず油とウメコブチャのしみのタンクトップでパンツのようなズボンをはいている。

 マリアはいつものメイド服であるがカチューシャのようなあれは斜めに被り、美麗で趣向をこらしたレースが縁についていた。

 ビクトリアはキョロキョロと小さな頭を動かし、周りを見回す。

 「人形は来ておらんのか?」

 コツンと帽子の上からマリアにこづかれるビクトリア。

 すると街に彩りを加える花が咲いてる草むらからルースター大尉とその兵士が顔をのぞかせる。

 ビクトリアはそちらに手のひらをかざし、彼らを制した。

 「人形ではなくナナですよ」

 ビクトリアはどうもこのスチームロイドに弱い。

 「そっそのナナはどこへ行ったのだ?」

 フンと鼻息をならし、いたずらっぽい目線でビクトリアを見たジェシカは腰に手をあてた。

 「それは後のお楽しみじゃ」

 じれったそうにもんどりかえるもといもじもじするビクトリアを見たジェシカは思わずヨダレをたらし、頬を紅潮させる。

 ほっぺが夕焼けみたいだ。

 (ジェシカは女の子がじれったそうにしているのを嘗めまわすように眺めるとても上品な趣味を持っている。もしビクトリアが男装していなければ喰われていたであろう)

 リョンドンの大きな橋にたどり着いたコマドリ姉妹ならぬ、コマドリ女子は橋の上からテミュズ河というリョンドンに流れる大きな河を眺めていた。

 ジュポジュポと煙突の穴から黒い風船を固めたような煙を吐き出しながら無数の蒸気船や水中用スチームボットを眺めているとビクトリアが急に叫んだ。

 「見て! 魚、凄く大きい魚」

 ぴょんぴょんはねながら彼女は興奮していたが指差す方を眺めたジェシカとマリアだがそこには何もいなかった。

 蒸気船の影でも見間違えたのであろうか?

 いやそこには魚ではないものの---ニワトリではなく---ルースター大尉とその部下がピチピチ全身ゴムタイツでシュノーケルを口に加えて幼い皇帝の様子をうかがっていた。

 すんでの所で橋の桟橋に捕まり彼らは見つからずにすんだ。

 リョンドンのでっかでっかな橋を渡り終えるとターキッシュアイスというほこりよりふわふわのターキッシュデュライト味のアイスにナッツが散らばっている斬新かつ濃厚なデュゲリスの人達がティータイムで樽の中でぐるぐる汗流しながら牛乳から作り出しそうなアイスをくわえながら公園を歩いてポカポカのお昼の芝生にいた。

 ビクトリアは歩いてものを食べる事や少し霧のフィルターの合間から見える市民を眺めるなど新しい事をたくさん行った。

 とある場所で止まった三人は古代ロマーニャの闘技場のような円形の建物にたどり着く、マリアとジェシカはビクトリアの手を---ジェシカは右手をマリアは左手を---つかんでその建物に小走りに走って行った。

 その中にはいるとビクトリアは目を大きく見張った。

 そこには建物の中だが地面にお花がたくさん咲いていて天井はガラスが張り巡らされていてあたたかい光が様々なお花を照らしている。

 「ここは」

 ビクトリアはふと呟いた。

 

 

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