第13話皇帝ビクトリア
ビービーとサイレンのなる廊下をギアとジェシカ、マリアは兵士達を蹴散らして進んで行くと、ばっと、手前にあのルースター大尉が立ちはだかっていた。
「まぁた、あなた達ですかぁ!!」
赤い軍服を纏ったルースター大尉、ホルスターにはマナワールの入った試験管がついた火器が左右の腰に収まっている。
後ろには大勢の軍人。
「そこまで」
ルースターの後ろから何者かが大きな音をたてる甲冑の軍団をひきつれてやってきた。
真ん中でニヤニヤ顔を隠せぬボーイッシュな女の子、まだ幼いが軍服を着てたくさんの勲章を胸に飾り、幼女が動くたびにその金属が隣の金属と擦れあってカチカチと音をならしている。
この小さいのに何故こんなに勲章を持って甲冑の人々に守られているのであろうか?
ルースター大尉率いる軍人はその幼女を見て慌ててひざまづき、頭(こうべ)を垂れた。
ジェシカが耳の穴をいじりながら言った。
「デュゲリス帝国の皇帝、ビクトリア様の直々のお出迎えか」
なんとその幼女はこの国の皇帝であった、彼女はジェシカを知っているらしく、
「メカオタクか、今日も油臭い」
黒い軍服は彼女のかなり歳上の夫アルバータが病気によって死んでしまいったので。喪服をモチーフにしている。
「そしてそこにいるのは貴女の弟子ね、クロムウェルだっけ?」
あまりにも高貴な方に出会い、緊張していたがここは元貴族の威厳をたもとうと礼儀正しくルースター達と同じように敬意を示した。
「今はこの身なりですが元はクロムウェル家、由緒ある貴族の子孫です」
ビクトリアはシルバーブロンドの短髪を人差し指で弄び、ぺろりと舌を出した。
「そうか、クロムウェルか、ふむふむ」
何かしら考え、青い瞳を細くして上からギアを見下す。
「クロムウェル、お主にいいことをしてやる、私の部屋に来い、二人っきりでな」
ざわざわと辺りがざわめくのもお構い無しにビクトリアはギアの手を掴んだ、皇帝だがまだ幼いためとても小さな手だったがなんととても硬い手だとギアは思った。
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