第9話人質
どよめく観衆、苦しそうに地べたに横になったままナナを見るギア。
「そのままその人を殺したりしたら」
虚ろな表情でナナはギアを見下ろした。
ギアは力なく首を横にふり。
「君はまた勘違いされる、君はとても良いこ、少しこの世界の事を知らないだけだよ」
しかし、それに反して客席はどよめき、まるで蜂の巣をつついたように大騒ぎとなった。
出口が逃げ惑う人々によって封鎖され、気絶する人まで現れた。
首をつかみ宙ぶらりんにになっている帝国兵そのまま舞台の上に落とし彼は重力の力によってドサリと倒れた。
「今でぇす、捕まえなさぁい!」
ルースター大尉は叫ぶ。
彼女の恐ろしさを目の当たりにして、いくら上官の命令でも何もできない帝国兵達。
「何しているんですかぁ、もし逃げたりしたらお前達はジ、エンドォですねぇ!」
またもホルスターからマナワールの入ったビーカーを取り付けた火器を取り出し高い天井を撃ち抜く。
天使の描かれた天井だがさすがに大きなホールの天井なのでそこまで弾丸は届かなかった。
帝国兵はもう一か八かでナナを取り囲み、無駄だと分かっていたが背水の陣、彼らはナナに火器を向ける。
突然、床に倒れていたギアは帝国兵の青いズボンにすがりついた。
「彼女に手を出すな」
帝国兵は煩わしそうに、ズボンの裾をひっぱった。
その衝撃でギアはまたも舞台の床に頭から倒れて鼻血をだしている。
「仕方ありませんねぇ」
ルースターは床に倒れているギアの右腕をぐいっと持ち上げた。
「化け物、こいつの命が惜しくば大人しく捕まりなさぁい」
ルースターの目が意地悪くギラリとひかる。
困惑の表情を見せるナナ。
「分かりませんかぁ? あなたがわたしに捕まらなければ、この小僧はここで死んでもらいまぁす」
死ぬという意味が分からず梅干しを思い出したようにひたいにしわを作るナナ。
「機能停止、お前との思い出もすべて忘れまぁす」
その言葉でがく然としたナナは大人しく腕をぶらさげる。
「だめだ! ナナ、これは罠だ」
ギアの声もナナには耳に入ってこなかった。
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